「日本円、このまま持っていても大丈夫なのか?」
今、多くの人がこの不安を抱えています。
2025年11月21日現在、ドル円相場は1ドル=157円台後半に達し、わずか数日で急激な円安が進みました。
スーパーに行けば値上げの嵐、ガソリン価格の高騰……私たちの生活は「通貨の弱さ」によって直接的な打撃を受けています。
さらに不気味なのが、「円安なのに、日本国債の金利も上がっている(国債価格が暴落している)」という現象です。
通常とは異なるこの動きは、日本経済が「危険水域」に入ったシグナルかもしれません。
この記事では、なぜ今これほどまでに円が売られているのか、そしてなぜ国債金利が上昇しているのか、その裏にある構造的な問題をわかりやすく解説します。
1. なぜ止まらない円安になっているのか?

11月に入ってからの円安加速は、単なる市場の綾ではありません。明確な「トリガー」と、根深い「構造欠陥」の2つが重なった結果です。
参照:https://kabutan.jp/stock/chart?code=0950
① 絶望的な「日米金利差」

最大の理由は、依然として開いたままの「金利差」です。
- アメリカ:
- 雇用統計が予想以上に強く、インフレ懸念が再燃。
- FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ観測が後退し、政策金利は3.75%〜4.00%付近の高水準を維持しています。
- 日本:
- 日銀は2025年に入って利上げをしたものの、政策金利はわずか0.5%程度。
- 「中立金利」には程遠い状況です。
この約3.5%〜4.0%もの金利差は、投資家にとって「タダでお金を拾う」ようなチャンスを生んでいます。これが「円キャリートレード」です。
【円キャリートレードの仕組み】
- 金利がほぼゼロ(0.5%)の「円」を借金して調達する。
- その円を売って「ドル」に換える(ここで円安が進む)。
- 手に入れたドルで、年利4%近い米国債などで運用する。
為替が動かなくても金利差だけで儲かるため、世界中のヘッジファンドや投資家がこぞって「円売り・ドル買い」に殺到しています。
② 日本経済の弱体化(スタグフレーションの影)

「金利を上げれば円安は止まるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、日銀は動けません。 直近の日本のGDP(国内総生産)は年率換算でマイナス1.8%。
6四半期ぶりのマイナス成長を記録しました。
景気が冷え込んでいる(不況)のに、物価だけが上がる。この状況で利上げを行えば、住宅ローン破綻や中小企業の倒産を招き、日本経済にとどめを刺しかねません。
市場は「日銀は景気が悪すぎて利上げできない(円安を止められない)」と足元を見ているのです。
2. 円安になるとどういった悪影響があるのか?
「輸出企業が儲かるから円安は良いことだ」という時代は終わりました。現在の過度な円安は、日本国内に深刻なダメージを与えています。
① 「悪いインフレ」が家計を直撃
日本はエネルギーや食料の多くを輸入に頼っています。円安は、これら輸入品の価格を無条件に押し上げます。
- エネルギー価格高騰: 電気代、ガス代、ガソリン代の上昇。
- 食料品価格の上昇: 小麦、肉、野菜などあらゆるコスト増。
賃金上昇が物価上昇に追いついていない(実質賃金がマイナス)現状では、円安が進むほど日本人は相対的に貧しくなります。
② 止まらない「破滅のループ」
政府は物価高対策として補助金を出そうとします。しかし、その財源はどこにあるのでしょうか? 借金(国債発行)です。
借金が増えれば、国の財政への信用が落ち、さらに円が売られる……。
- 円安で生活が苦しくなる
- 政府が巨額の経済対策(バラマキ)を発表する
- 財政悪化を懸念して「円」と「日本国債」が売られる
- さらに円安が進み、インフレが悪化する
現在、日本はこの「負のスパイラル」に陥りつつあります。
3. なぜ日本国債が上昇しているのか?
通常、「安全資産」とされる国債の金利が上昇する(=国債の価格が下落する)のは、国家財政への警戒シグナルです。
なぜ今、円安とセットで国債金利が急騰しているのでしょうか。
① 高市政権による「巨額補正予算」への警戒
高市政権下で検討されている17兆〜20兆円規模の大型経済対策が、市場に衝撃を与えました。
「経済を支えるため」という名目ですが、投資家は冷ややかです。
- 需給の悪化:
- 巨額の対策を行うには、新たに国債(借金)を大量に発行する必要があります。
- 市場に国債が溢れかえれば、当然価値(価格)は下がります。
- 国債価格が下がると、金利は上昇します。
- 財政規律の崩壊:
- 「日本は借金を返済するために、さらに借金を重ねるつもりだ」と見なされ、日本国債という資産自体の信用リスクが意識され始めています。
② 「悪い金利上昇」の始まり

景気が良くて金利が上がるなら問題ありません。
しかし今は、「通貨の価値が下がる(インフレになる)から、高い金利をもらわないと割に合わない」という理由で金利が上がっています。
投資家たちはこう考えています。
「将来、円の価値がさらに下がるなら、わずかな金利で日本国債なんて持っていられない。もっと高い利回りをよこせ、さもなくば売るぞ」
これが、長期金利が数年ぶりの高水準へ押し上げられている正体です。
日銀や政府が財政出動(支出)をほのめかすたびに、「必死さ」が逆に市場の不安を煽り、国債売りと円売りを加速させているのです。
4. まとめ
現状のドル円相場157円台は、単なる通過点に過ぎない可能性があります。
市場コンセンサスでは、1ドル=160円を試す展開が現実味を帯びてきました。
今後のシナリオ

- 円安継続(メインシナリオ):
- 日銀が決定的な利上げを行えず、米国の金利も下がらない場合、160円突破は時間の問題です。
- 政府の為替介入があったとしても、それは一時的な「焼石に水」で終わるでしょう。
- 根本的な金利差と貿易赤字が解消されていないからです。
- 円高修正(サブシナリオ):
- アメリカ経済が急激にリセッション(景気後退)入りし、FRBが大幅利下げを行った場合のみ、円安是正の可能性があります。
- しかし、それは「他力本願」でしかありません。
私たちが意識すべきこと
「日本円だけ持っていれば安全」という神話は崩れつつあります。
円の価値が下落し続ける中で、資産を守るためには以下の視点が不可欠です。
- インフレヘッジ: 現金預金だけでなく、物価上昇に強い資産への分散。
- 外貨資産の保有: 円以外の通貨(ドルなど)を持つことで、円安リスクを相殺する。
- 個人の稼ぐ力: 企業の賃上げを待つだけでなく、スキルアップや副業で自衛する。
日本経済が構造的な転換点を迎えている今、私たち一人ひとりが危機感を持ち、行動を変えていく必要があります。
また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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