「まさか、ここまで一気に崩れるとは……」
2025年11月18日、東京株式市場を襲った衝撃は、多くの投資家のシナリオを狂わせるのに十分な破壊力を持っていました。
日経平均株価は心理的な防衛ラインとされていた「50,000円」の大台をあっさりと割り込み、前日比1,600円を超える暴落を記録しました。
SNSや投資掲示板では
「セリクラ(セリング・クライマックス)か?」
「いや、まだ入り口に過ぎない」
といった議論が飛び交っていますが、この下落の本質は単なるパニック売りではありません。
そこには、「AIバブルの転換点」と「半導体サイクルの構造変化」という、より深く、重いテーマが潜んでいます。
本記事では、本日(11月18日)の市場データを徹底的に解剖し、なぜ今、日本株が売られているのか、そして明日のNVIDIA決算が市場にどのような審判を下すのか、チャート分析と最新のファンダメンタルズ情報を交えて解説します。
1. 2025年11月18日:市場崩壊の全貌
まずは、本日の相場がいかに異常な動きであったか、実際のチャート画像をもとに振り返ります。
日経平均株価:5万円の岩盤崩壊

- 終値: 48,702.98円
- 前日比: -1,620.93円 (-3.22%)
- テクニカル状況:
- 5日移動平均線(緑): 50,875円
- 25日移動平均線(赤): 49,731円
- 75日移動平均線(青): 45,462円
特筆すべきは、25日移動平均線(49,731円)を明確に下回ったことです。
これまでサポートとして機能していた短期〜中期のトレンドラインが一気に「レジスタンス(上値抵抗)」へと変化しました。
チャートのローソク足は長く黒い「大陰線」を形成しており、寄付きから引けにかけて売り圧力が全く弱まらなかったことを示しています。
50,000円という節目での押し目買い意欲が完全に打ち砕かれた形です。
TOPIX・グロースも全面安

この下落は日経平均(半導体株主導)だけのものではありません。
- TOPIX: 3,251.10 (-2.88%)
- 内需・外需問わず、日本株全体が「キャッシュ化」の対象となりました。
- グロース250(旧マザーズ): 679.97 (-2.66%)
- 個人投資家のセンチメント悪化を反映し、リスクマネーが急速に逃避しています。
2. なぜ下落し続けているのか? 3つの核心的理由
今回の暴落には、明確なトリガーと、その背後にある構造的な要因の2層が存在します。
理由①:NVIDIA決算への「恐怖」と「ウィスパーナンバー」

最大の要因は、明日(現地時間11月19日)に控えた米NVIDIA(エヌビディア)の決算発表です。
「好決算なら上がる」という単純な話ではありません。市場は今、「高すぎる期待(ハードル)」に怯えています。
- コンセンサス(表向きの予想): 売上高 約548億ドル
- ウィスパーナンバー(投資家の本音): 売上高 560億ドル以上
| 項目 | 会社ガイダンス | アナリストコンセンサス | ウィスパーナンバー(市場期待値) | 乖離の意味 |
| 売上高 | 540億ドル | 548億〜551億ドル 4 | 560億ドル以上 4 | 550億ドル程度では「材料出尽くし」売りのリスク |
| EPS(調整後) | – | $1.24 – $1.26 3 | $1.30 – $1.35 | 利益成長の加速鈍化が懸念される |
| データセンター売上 | – | 485億〜491億ドル 11 | 500億ドル超 | AI投資の持続性を測る最大の指標 |
機関投資家やヘッジファンドの間では、「会社予想やアナリスト予想を上回る程度では不十分」という認識が定着しています。
仮に素晴らしい決算を出しても、この「裏の期待値」に届かなければ「成長鈍化」のレッテルを貼られ、株価が急落するリスクがあるのです。
これを警戒し、決算またぎのリスクを回避するための「事前のポジション整理」が、今日の大幅安の正体です。
理由②:半導体サイクルの「2025年ピークアウト説」

より深刻なのは、半導体市場全体の成長ストーリーに陰りが見え始めている点です。
これまで「AI半導体は無敵」とされてきましたが、WSTS(世界半導体市場統計)などのデータによると、2025年の成長率は前年(2024年)に比べて鈍化すると予測されています。
株式市場は「成長の絶対額」ではなく「成長の勢い(モメンタム)」の変化を何よりも嫌います。
さらに、CLSA証券などのレポートでは、「2025年は先端半導体市場のスローダウンの年になる」との見方が示されています。
AIサーバー以外の、スマートフォンやPC向けの汎用半導体の需要回復が遅れていることが、市場心理を冷やしています。
理由③:メモリ市場の「悪いインフレ」と需要破壊
ここ最近、SamsungなどのメモリメーカーによるDRAM価格の引き上げが報じられていますが、これは「需要が強すぎて価格が上がっている」のではありません。
HBM(AI向けメモリ)への生産集中により、汎用メモリの供給が絞られた結果の「コストプッシュ型インフレ」です。
これにより何が起きているかというと、中国のスマートフォンメーカーなどが、部材コストの高騰を嫌って発注量を30〜40%削減するという動きが出ています。
これを経済学用語で「需要破壊(Demand Destruction)」と呼びます。
価格高騰が需要そのものを殺してしまう現象です。これが、東京エレクトロンやアドバンテストといった日本の製造装置メーカーの先行き不安に直結しています。
3. 半導体以外の銘柄も下がっているのはなぜ?

「半導体がダメなら、バリュー株や内需株へ資金が移る(セクターローテーション)のでは?」と思った方も多いでしょう。
しかし、TOPIXチャートが示す通り、今回は「全面安」です。
海外投資家の「日本株バスケット売り」
TOPIXが約3%も下落する場合、通常は海外投資家による先物主導の売りが原因です。
彼らは個別の銘柄を選別して売るのではなく、「日本株全体」をリスク資産として捉え、ポートフォリオのエクスポージャー(保有比率)を落としに来ています。
これには、円高方向への警戒感(155円台の攻防)や、日本のGDP成長率の鈍化といったマクロ経済指標の弱さも影響しています。
また、日銀の利上げ観測もあり市場的にはあまり良くありません。今後利上げがある限りあまり株価上昇する期待は薄まりますね。
中国との関係悪化
最近、高市首相の発言により中国との関係が悪化しています。
そのため、中国関連銘柄の株価が下がっており、今後も相場全体にも悪影響を及ぼす可能性が高いです。
4. チャート分析:今後の重要ラインは?
テクニカル分析の視点から、今後の攻防ラインを読み解きます。

① 25日線のトレンドを下抜ける
49,731円付近にあった25日移動平均線(赤線)は、相場の短期的な強弱を分ける生命線でした。
ここを割り込んだことで、トレンドは「調整」から「下落」へと正式に転換したと判断せざるを得ません。
② 次の砦は「75日線」と「48,000円」
現在48,702円ですが、その下にある強力なサポートラインは75日移動平均線(青線)の45,462円です。
まだ距離がありますが、もし48,000円の心理的節目を割り込むと、この75日線まで一気に真空地帯を滑り落ちるリスクがあります。
③ 米国市場との連動

参考としてNASDAQ100のチャートを見ると、こちらも高値圏での揉み合いから下放れの兆候が見えます。
MACDなどのオシレーター系指標も弱気シグナル(売り転換)を示しており、日米ともにチャート形状が悪化しています。
参照:https://us.kabutan.jp/indexes/%5ENDX/chart
5. 今後の相場予想:NVIDIA決算後の3つのシナリオ
では、私たちはこれからどう動くべきでしょうか?
すべては日本時間11月20日早朝(米国市場19日引け後)のNVIDIA決算にかかっています。
シナリオA:起死回生の急騰(確率 20%)
- 条件: 売上高が560億ドルを大幅に超え、次世代チップ「Blackwell」の供給問題が「完全に解決した」とアナウンスされること。
- 株価: 空売り勢の買い戻し(ショートカバー)が入り、日経平均は一気に50,000円を回復。
- 戦略: 半導体主力株の押し目買いチャンス。
シナリオB:材料出尽くし・ダラダラ調整(確率 50%)
- 条件: コンセンサス(548億ドル)は超えるが、ウィスパーナンバーには届かない。またはガイダンスが保守的。
- 株価: 「まあまあ良い決算」では許されず、失望売りが出る。日経平均は48,000円〜49,000円でのボックス相場へ。
- 戦略: 積極的な買いは控え、キャッシュポジションを高める。
シナリオC:AIバブル崩壊の序章(確率 30%)
- 条件: 売上高がコンセンサス未達、またはBlackwellの出荷遅延が明言される。
- 株価: パニック売り加速。日経平均は47,000円を割り込み、75日線(45,500円近辺)を目指す展開。
- 戦略: 株式の保有比率を下げ、ディフェンシブ株や債券、金(ゴールド)へ避難。
6. まとめと投資家へのメッセージ
2025年11月18日の暴落は、単なる「調整」ではなく、相場のフェーズが変わるシグナルかもしれません。
これまでのように「下がったら買えば助かる」というAI相場の常識が通用しなくなる可能性があります。
ブログ読者の皆様へのアドバイス:
- 落ちるナイフは掴むな: 本日の安値引け(48,702円)は、明日も売りが続く可能性を示唆しています。NVIDIAの決算結果を確認するまでは、無理なエントリーは禁物です。
- 半導体以外の「質」を見直す: 全面安の中にも、好業績で割安な銘柄は存在します。半導体一本足打法ではなく、ポートフォリオの分散を考える良い機会です。
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