保有している助川電気工業の株価が急に上がったけど、理由がわからない
今から投資しても間に合うのだろうか?
2025年7月23日、助川電気工業(東証スタンダード:7711)の株価は前日比+11.55%となる2,666円まで急騰し、一時2,817円の年初来高値を更新しました。
出来高も142万株超と急増し、市場の大きな注目を集めたことがわかります。
しかし、同社からはこの日に株価を直接動かすような発表はありませんでした。では、なぜ株価はこれほどまでに急騰したのでしょうか?
この記事では、株価急騰の背景を徹底解説するとともに、独自の強みを持つ同社の事業内容、好調な業績、そして今後の株価動向について、ファンダメンタルとテクニカルの両面から深く分析していきます。
1. 助川電気工業(7711)とはどんな会社?
まず、助川電気工業がどのような会社なのか、その基本情報と事業の3つの柱を見ていきましょう。
項目 | 内容 |
会社名 | 助川電気工業株式会社 |
証券コード | 7711(東証スタンダード) |
設立 | 1949年2月 |
本社所在地 | 茨城県高萩市 |
資本金 | 9億2,110万円 |
事業内容 | ①エネルギー関連事業、②産業システム関連事業、③溶融金属関連事業 |
助川電気工業の事業は、主に以下の3つのセグメントで構成されています。
- エネルギー関連事業:
- 原子力発電(核分裂・核融合)や火力発電所向けに、温度センサーやヒーター、さらには安全性実証試験装置といった極めて専門性の高い製品を提供しています。
- これが同社の祖業であり、最大の強みです 。
- 産業システム関連事業:
- 半導体や液晶パネル(FPD)の製造装置に不可欠な、精密な温度制御システムを手掛けています。
- 世界的なハイテク産業の成長を支える重要な役割を担っています 。
- 溶融金属関連事業:
- 「熱と計測」技術を応用し、自動車部品の製造などに使われるアルミニウム溶湯の搬送ポンプや関連装置を製造しています。
これらの事業は、それぞれ異なる市場の成長サイクルに乗っており、安定した経営基盤を構築しています。
2. なぜ助川電気工業の株価が上昇しているのか?
7月23日の株価急騰の直接的な原因は、会社からの発表ではありませんでした。
その引き金となったのは、株式市場全体を巻き込む大きなテーマ、すなわち「首相退陣での注目銘柄」と「原子力発電の再評価」です。
理由:石破首相の退陣観測報道で高市関連銘柄に注目
7月23日の報道によると、石破首相に退陣の可能性が浮上したことで、株式市場では次期自民党総裁選を見越した動きが強まりました。
市場の関心は有力候補と目される人物の政策に集まり、特に高市早苗氏が掲げる政策に関連する銘柄が大きく動きました。
その中で、核融合発電関連企業である助川電気工業の株価が急騰し、連日年初来高値を更新するなど、活発な取引が見られました。
なぜ助川電気工業が特に注目されたのか?
関西電力は、美浜原子力発電所での原発の新設に向けた調査の実施について、記者会見が行われました。
次世代型原発の建設に向けた取り組みが進むことで核融合発電関連企業である助川電気工業が注目したことも影響があります。
三菱重工業のような巨大企業も原子力事業を手掛けていますが、事業全体に占める原子力の割合は限定的です。
一方、助川電気工業は事業規模が比較的小さく、かつ原子力関連事業への依存度が高い専門企業です。
そのため、「原子力に追い風が吹く」というニュースは、同社の将来の業績に与えるインパクトが相対的に非常に大きくなります。
テーマの恩恵をより純粋な形で享受できると考えた投資家の資金が、集中的に流れ込んだ結果、7月23日のような株価の急騰が引き起こされたのです。
3. 今後の株価を考察
急騰の背景を理解した上で、次に気になるのは「今後の株価はどうなるのか?」という点でしょう。
ここでは、ファンダメンタル(業績や成長性)とテクニカル(株価チャート)の両面から、将来性を分析します。
ファンダメンタル分析
業績:加速する利益成長
まず、同社の業績を見てみましょう。下の表は、過去の実績と会社の業績予想をまとめたものです。

参照:https://kabutan.jp/stock/?code=7711
注目すべきは、単なる増収増益ではない点です。
2024年9月期の会社予想では、売上高が前期比+8.4%の伸びに対し、営業利益は+55.5%と驚異的な伸びを見込んでいます。
これは、売上高の伸びをはるかに上回るペースで利益が拡大していることを意味し、「利益率が急改善している」証拠です。
高付加価値製品の販売増やコスト管理の徹底が進んでいることを示唆しており、企業の稼ぐ力が格段に向上していることがわかります。
成長エンジン①:原子力ルネサンス(国策)
前述の「GX脱炭素電源法」は、同社にとって数十年にわたる巨大な追い風となります。
同社は、原子炉の安全性を確認するための「模擬燃料集合体」や、次世代高速炉に不可欠な液体ナトリウム関連技術、さらには未来のエネルギーである「核融合」の国際プロジェクト「JT-60SA」にも深く関与しています。
これらは、他社が容易に真似できない高い技術障壁を持つ製品・技術であり、国策の進展とともに需要が拡大していくことが期待されます。
成長エンジン②:半導体ブーム(世界的な潮流)
同社にはもう一つ、強力な成長エンジンがあります。それが半導体関連事業です。
同社は、製造装置に使われる高精度のヒーターや温度センサーを供給しており、世界的な半導体投資の拡大がそのまま業績に貢献します。
この「原子力(国内政策)」と「半導体(世界的な技術革新)」という、相関性の低い2つの巨大な追い風を同時に受けている点が、助川電気工業の最大の強みであり、投資家にとっての魅力と言えるでしょう。
バリュエーション(株価評価):割高感は?
株価急騰後、気になるのは割高感です。
2025年7月23日の終値2,666円と、会社予想の1株当たり利益(EPS)131.3円から計算されるPER(株価収益率)は約20.3倍です。
同業の原子力関連銘柄と比較してみましょう。
銘柄名 (コード) | PER (予) | PBR (実) | ROE (実) |
助川電気工業 (7711) | 約20.3倍 | 3.19倍 | 16.46% |
木村化工機 (6378) | 約10.4倍 | 1.05倍 | 12.62% |
岡野バルブ製造 (6492) | 約14.5倍 | 0.86倍 | 9.86% |
確かに、同業他社と比較してPERは高水準にあります。
しかし、これは市場が同社の①圧倒的に高い利益成長率、②ROE(自己資本利益率)16.46%という優れた収益性、そして③半導体という第二の強力な成長エンジンを高く評価していることの表れです。
質の高い成長性に対して、ある程度のプレミアムが支払われている状況と言えます。
テクニカル分析:チャートが示す強い上昇サイン

次に、株価チャート(日足)から今後の値動きを探ります。
- 力強いブレイクアウト:
- 7月23日のローソク足は、寄り付きから引けまで一貫して買いが優勢だったことを示す「大陽線(丸坊主)」です。
- それまでの抵抗線であった2,300円付近を、爆発的な出来高を伴って上抜けており、極めて強い買いシグナルと解釈できます。
- 上昇トレンドの「パーフェクトオーダー」:
- チャート上の移動平均線を見ると、短期線(5日)・中期線(25日)・長期線(75日)が上から順に並ぶ「パーフェクトオーダー」を形成しています。
- これは、短期・中期・長期のすべての時間軸で上昇トレンドが発生していることを示す、最も強い買いサインの一つです。
- 新たな支持線:
- テクニカル分析の基本として、「一度破られた抵抗線は、次の支持線になる」という原則があります。
- これにより、これまで上値を抑えてきた2,200円~2,300円の価格帯が、今後は強力な下値支持線(サポート)として機能することが期待されます。
テクニカル的には、教科書通りの力強い上昇トレンドが開始されたと判断できます。
4. まとめ
結論として、助川電気工業の株価上昇は、明確な国策と世界的な技術トレンドという強力な裏付けを持つものであり、一過性のものとは考えにくい状況です。
もちろん、株式投資に絶対はありません。半導体市況の変動や、原子力政策の遅延といったリスクは常に存在します。
しかし、同社が持つ独自の技術力と、2つの大きな成長ストーリーを考慮すれば、株価は中長期的にさらなる高みを目指すポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
今後の業績の進捗と、2,200円~2,300円の支持線を維持できるかを注視していくことが重要です。
本ブログでは銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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