なぜQPS研究所の株価が上昇しているのか?今後の株価も予想!

QPS研究所 銘柄分析 個別銘柄分析

宇宙開発ベンチャーとして急速に市場の注目を集めている株式会社QPS研究所(証券コード:5595)。

2025年6月4日現在、その株価は力強い上昇トレンドを継続しており、多くの投資家から熱い視線が注がれています。

特に直近では、衛星開発の進捗や宇宙開発に関する国家レベルの報道が株価を刺激する要因となっています。

本記事では、QPS研究所の株価がなぜこれほどまでに市場の期待を集めているのか、その背景にある複数の要因を深掘りします!

1. QPS研究所とは?~会社概要と宇宙にかける情熱~

1.1 会社概要

株式会社QPS研究所(以下、QPS研究所)は、福岡県福岡市中央区に本社を構える、2005年6月設立の宇宙開発企業です 。代表取締役社長CEOは、大西俊輔氏が務めています 。  

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、証券コードは「5595」です 。

主な事業内容は、人工衛星(特に小型SAR衛星)、人工衛星搭載機器、精密機器、電子機器並びにソフトウェアの研究開発、設計、製造、販売、そして衛星が取得したデータに関する事業やサービス提供です 。

九州大学における宇宙工学の研究成果と、日本の宇宙開発のパイオニアたちの情熱を基盤として設立されました 。  

QPS研究所 会社基本情報

項目内容
正式社名株式会社QPS研究所
本社所在地福岡県福岡市中央区天神1-15-35 レンゴー福岡天神ビル6階
代表者代表取締役社長 CEO 大西俊輔
設立年月2005年6月
主な事業内容人工衛星、人工衛星搭載機器、精密機器、電子機器並びにソフトウエアの研究開発、設計、製造、販売、人工衛星等が取得したデータに関する事業、人工衛星等を利用したサービスの提供
上場市場・証券コード東証グロース・5595
資本金19億39百万円
企業URLhttps://i-qps.net/

1.2 事業の核心:小型SAR衛星とデータソリューション

QPS研究所の事業の核心、小型SAR(合成開口レーダー)衛星「QPS-SAR」の開発・製造・運用、そしてそれによって得られる高分解能SAR画像データの販売およびデータ解析を通じたソリューション提供にあります 。  

SAR衛星最大の特長は、自らマイクロ波を地表に照射し、その反射波を観測することで画像を生成する点です。

これにより、太陽光を必要とせず、天候(雲、雨、噴煙なども透過)や昼夜に一切左右されずに地表の詳細な観測が可能です 。

この全天候・昼夜間観測能力は、防災・減災、インフラ監視、安全保障など、即時性と確実性が求められる多くの分野で光学衛星に対する明確な優位性となります。  

1.3 技術的優位性:世界を驚かすアンテナ技術

QPS研究所の競争力の源泉は、独自に開発し特許も取得している軽量かつ大型の展開式アンテナ技術です。

このアンテナは、収納時にはコンパクトでありながら宇宙空間で直径3.6mに展開し 、SAR衛星の性能を左右するアンテナ面積を確保します。  

この技術により、衛星本体を100kg級という小型・軽量サイズに抑えつつ、従来の大型SAR衛星に匹敵するサブメートル級(最高分解能46cm)という世界トップレベルの高解像度を実現しています 。  

衛星の小型・軽量化は、開発・製造コストだけでなく、1回のロケットで複数機を打ち上げることを可能にし、打上げコストの大幅な削減にも貢献します。

これが、多数の衛星からなる「コンステレーション」構築というビジネスモデルの経済合理性を支える鍵となっています 。

高解像度を維持しつつ衛星を小型化・低コスト化することで、初めて「36機コンステレーションによる準リアルタイム観測」という、従来は経済的に困難だったビジネスモデルが現実味を帯びてきます。

つまり、このアンテナ技術はQPS研究所の事業戦略そのものの実現可能性を左右する最重要基盤技術と言えるでしょう。  

2. なぜQPS研究所の株価が上昇しているのか?

2025年6月4日、QPS研究所の株価は前日比+137円(+6.40%)の2,277円で取引を終え、前日に付けた年初来高値2,280円(SBI証券のデータでは5月29日 )に迫るなど、市場の強い関心を集め続けています 。

この株価上昇の背景には、個別の好材料の発表が相次いだことに加え、マクロな市場環境やテーマ性も寄与していると考えられます。  

2.1 衛星開発・打上げの着実な進捗と将来への期待感

  • QPS-SAR10号機「ワダツミ-Ⅰ」の成功と11号機「ヤマツミ-Ⅰ」への期待: 2025年5月17日に打ち上げられた10号機「ワダツミ-Ⅰ」は、初交信およびアンテナ展開に成功しました。
    • これに続き、6月4日には早くも11号機「ヤマツミ-Ⅰ」を米国Rocket Lab社のElectronロケットで6月11日(日本時間)以降に打ち上げる予定だと発表されました。
    • 10号機の成功から半月余りでの次号機打上げ計画の発表は、同社の開発・製造体制が加速していることを強く印象づけ、36機コンステレーション構築への期待感を高めています。大西社長も「計画通りに開発・製造が加速していることを強く実感している」とコメントしています 。  
  • 連続成功による信頼感の醸成: 2025年に入ってからは、3月15日の9号機「スサノオ-Ⅰ」の打上げ・初交信成功 もあり、技術的なマイルストーンを次々とクリアしていることが投資家の信頼に繋がっています。  

2.2 安全保障分野での貢献期待:日米宇宙協力と「ゴールデンドーム構想」

6月4日午前の報道として、日米両政府がサイバー・宇宙分野での連携強化を首脳会談後の共同声明に明記する方向で最終調整に入ったと報じられました。

これを受け、QPS研究所を含む宇宙関連株に短期資金が流入したと見られています。  

特に市場で注目されたのが、この日米協力の文脈で語られる米国の「ゴールデンドーム計画」という次世代ミサイル防衛システム構想です。

QPS研究所のSAR衛星は、昼夜・天候を問わず高分解能で地上の微細な変化を捉える能力を持つため 、ミサイル発射兆候の早期検知や追跡能力強化といった安全保障分野での貢献が期待されています。

この期待感が株価を押し上げる一因となったと考えられます 。

QPS研究所の株価は、個々の技術的成果だけでなく、それが国家戦略や国際協力といったより大きな物語と結びついた時に、より強い市場の反応を引き出しているように見受けられます。

これは、同社の技術が持つ潜在的な戦略的価値を市場が認識し始めている証左と言えるでしょう。  

2.3 国策としての宇宙開発推進と企業価値向上

QPS研究所は、JAXAの「宇宙戦略基金」の事業者に採択され、2027年3月までを対象とする当初交付金額として約84億円の交付決定を受けています。

この基金は、同社が進める24機体制の衛星コンステレーション構築に向けた資金確保に大きく貢献するものであり 、国策として宇宙産業を育成しようという政府の強い意志の表れでもあります。

こうした強力な後押しは、企業の成長期待と信用力を高め、株価にもポジティブに作用しています。  

2.4 株式市場における流動性向上と投資家層の拡大

2025年5月28日、QPS研究所の株式が貸借銘柄に選定されたことがTDnetで開示されました。

これにより、信用取引における選択肢が増え、株式の流動性が向上することが期待されます。

ダイヤモンド・ザイの記事では、この選定が流動性を向上させ、株価水準回復に寄与したと指摘されています。

市場参加者の増加や取引の活発化は、株価形成において一般的に好材料とされます。

この貸借銘柄選定は、単に流動性を高めるだけでなく、QPS研究所が株式市場において一定の認知度と取引規模を獲得し、より成熟した上場企業としてのステージに進みつつあることを間接的に示しています。  

2.5 ポジティブな企業ニュースとIR活動

経営体制の強化として、2025年6月1日付で社長室長の三輪洋之介氏が執行役員 経営管理本部長 CFOに就任したことが発表されました。

成長フェーズにある企業にとって、財務戦略や経営管理体制の強化は事業基盤の安定化に繋がり、投資家に安心感を与えます。  

また、同社は投資家からの質問への回答を公開する など、積極的なIR活動を展開しており、企業理解の促進と透明性の確保に努めている点も評価できます。  

2025年6月4日時点の株価上昇要因と市場の反応

上昇要因具体的な出来事/ニュース発表日/報道日市場・投資家心理への影響
衛星開発の進捗10号機打上げ・アンテナ展開成功、11号機打上げ予定発表2025/5/17, 6/4開発・製造能力の加速とコンステレーション構築への期待感向上、技術的信頼感の醸成
安全保障への期待日米宇宙協力報道、「ゴールデンドーム構想」への関与期待2025/6/4SAR技術の戦略的重要性の認識、安全保障分野での具体的な需要発生期待による株価刺激
国策支援宇宙戦略基金 約84億円の交付決定2025/3月以前に報道長期的な成長期待と企業信用力の向上、資金調達リスクの低減
市場流動性向上貸借銘柄に選定2025/5/28株式の売買活発化、多様な投資家層の参加促進、より適正な株価形成への期待
経営体制強化執行役員CFO就任2025/6/1成長期における財務戦略・経営管理体制の強化による事業基盤安定化への期待、投資家の安心感向上

これら一連のポジティブニュースが短期間に集中して発表・報道されることで、投資家のセンチメントが強気に傾き、買いが買いを呼ぶ展開(モメンタム効果)が生じている可能性があります。

特に成長期待の高いグロース市場の銘柄では、このようなニュースフローの集中が株価の急騰を引き起こしやすい傾向があります。

3. QPS研究所の今後の株価を考察 ~成長戦略と市場ポテンシャル~

3.1 収益モデルの進化と財務状況

現在の主な収益源は、SAR衛星が取得した画像データの販売であり、特に国内官公庁(内閣府、防衛省、経済産業省、JAXA、国土交通省など)が主要顧客となっています 。

2023年度の国内官公庁におけるSAR衛星関連事業の主な発注実績のうち、QPS研究所は55.4%のシェアを獲得しています。

今後は、この安定した収益基盤を元に、国内外の民間企業への展開を加速させ、将来的には官公庁と民間企業の売上比率を半々にすることを目指しています。

財務面では、2025年5月期第3四半期累計(2024年6月1日~2025年2月28日)の売上高は18億37百万円と前年同期比79.8%の大幅増収を達成しました 。

しかし、衛星開発案件の比率が高いことや、衛星機数増加に伴う減価償却費の先行計上 、QPS-SAR5号機の減損損失計上 などにより、営業損失22百万円、経常損失195百万円、四半期純損失18億33百万円を計上しています 。  

事業内容的に赤字になりやすい銘柄なんですね!
なので赤字拡大しても今後の期待で株価は上昇していくことがわかります。

一方で、EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は340百万円(前年同期98百万円)と改善しており 、基礎的な収益力は向上していると見られます。

通期での黒字化はまだ先ですが、衛星運用機数の増加に伴うデータ販売機会の拡大とコスト構造の改善により、将来的には安定的な黒字化と収益成長を目指しています。

「宇宙戦略基金」等の政府支援は、短期的な資金繰り支援に留まらず、QPS研究所が取り組む事業の「公共財」としての一面を強化し、長期的な事業継続性と社会的重要性を裏付ける効果があります。

これは、民間投資家にとってのリスク許容度を高め、より長期的な視点での投資を促す可能性があります。

また、官公庁が初期の主要顧客となることで、技術実証と安定収益の確保という二重のメリットを享受し、それを足掛かりに民間市場へ展開するという成長戦略の確度を高めています。

3.4 今後の株価予想

まず現在のトレンドですが、本日大きな陽線を形成しています。

これは買いの勢いが非常に強いことを示唆しています。特に5月後半から6月にかけて株価は急騰しており、強い上昇トレンドが発生していることがわかります。

また、5日移動平均線と25日移動平均線も上向きで、短期的にも中期的にも非常に強い上昇基調ということを示しています!

株価が急騰を始めた5月後半から、出来高も顕著に増加しています。

特に6月3日、4日は1,600万株を超える大商いとなっており、市場の注目度が非常に高く、活発な取引が行われていることを示しています。

今後の株価予想シナリオ

現在の上値抵抗線として意識されるのは2400~2500円だと思います。

自分的にはそこら辺で利確売りや達成感での売りが多くなるのではないかと考えています。(過熱感もあるので。。。)

しかしながら、国策銘柄でもあるので好材料のニュースが続けばどんどん株価は上昇しそうなので、チェックしとくのがいいかと思います。

アナリストによる評価と目標株価: 2025年6月4日時点で、複数の証券アナリストがQPS研究所をカバーしており、総じて「強気」のレーティングを付与していますが、平均目標株価は1,943円と、必ずしも現在の株価水準を上回るものではありません 。

これは、アナリストが将来の収益化(現在は赤字予想)やPBR(株価純資産倍率)などのファンダメンタルズを基に評価する一方、市場の期待先行で株価が形成されている可能性を示唆しています。

参照:https://kabutan.jp/stock/?code=5595

4. まとめ

2025年6月4日現在、株式会社QPS研究所の株価は、

①衛星開発・打上げの相次ぐ成功と今後の計画への期待感、

②日米宇宙協力や「ゴールデンドーム構想」といった安全保障分野での貢献期待、

③宇宙戦略基金などの国策支援、

④貸借銘柄選定による市場流動性の向上、

⑤経営体制の強化といった複数の好材料が複合的に作用し、

力強い上昇トレンドを形成しています。

同社の中核戦略である「36機小型SAR衛星コンステレーションによる準リアルタイム地球観測」の実現は、防災、インフラ、安全保障など多岐にわたる分野で革新的な価値を生み出す可能性を秘めており、これが市場からの高い期待の源泉となっています。

しかしながら、その道のりは平坦ではなく、衛星打上げの失敗リスク、巨額な先行投資に伴う財務リスク(現在は赤字経営で継続企業の前提に関する注記あり)、激化する市場競争、技術開発の遅延など、宇宙ビジネス特有の高いリスクも伴います。

今後の株価は、これらのリスクを克服し、計画通りにコンステレーションを構築・運用し、具体的な収益に結び付けていけるかどうかに大きく左右されるでしょう。

QPS研究所への投資は、短期的なニュースフローに左右される側面と、数年単位での事業成果を待つ長期的な視点の両方が求められることを示唆しています。

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
https://blog-hero.com/