ニデックの株価が急落した理由は?特別注意銘柄?今後の株価を予想!

個別銘柄分析

日本を代表する製造業であり、強力な成長企業として知られる「ニデック(Nidec、旧日本電産)」。

その株価が2025年9月、投資家を震撼させる急落に見舞われました。

「一体何が起こったのか?」

「どこまで株価が下がり続けるのか?」

「今後の株価はどうなるのか?」

そんな不安の声を抱える投資家の方も多いのではないでしょうか。

企業統治の根幹を揺るがす「不適切会計」の疑いと、それに伴う「特別注意銘柄」への指定、そして「日経平均株価」からの除外という、まさに”三重苦”とも言える深刻な事態が背景にあります。

この記事では、ニデックの株価急落の理由を時系列で徹底的に解明し、ファンダメンタルズ(業績)とテクニカル(株価チャート)の両面から、今後の株価の行方を詳細に考察します!

1. なぜニデックの株価が下落したのか?

2025年9月から10月にかけて、ニデックの信用と株価は坂道を転げ落ちるように下落しました。

一連の出来事を時系列で整理します。

①2025年9月4日:中国子会社での不適切会計の「疑い」

すべての始まりは、9月3日の取引終了後に発表された「不適切な会計処理の疑い」でした。

  • 内容:
    • 傘下のニデックテクノモータの中国子会社において、サプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(約2億円)に関する不適切な会計処理の疑いが判明。
  • 問題の拡大:
    • 調査の過程で、この件以外にも「当社やグループ会社の経営陣の関与又は認識の下で、資産性にリスクのある資産に関して評価減の時期を恣意的に検討しているとも解釈しうる」資料が複数発見されました。
  • 対応: 第三者委員会の設置を決定。

この時点ではまだ「疑い」であり、金額も2億円と限定的でした。

しかし、「経営陣の関与」や「評価損の恣意的な先送り」といった、企業統治の根幹に関わる深刻なワードが飛び出したことで、市場には強い不透明感が広がり、翌9月4日の株価は大量の売り注文で急落しました。

最近にも「株式会社オルツ」が売上の9割を不正会計して上場廃止されたので不正会計には厳しい目で見ちゃいますよね

②2025年10月24日:業績予想取り下げと「無配」転落

投資家が固唾をのんで見守る中、10月23日の取引終了後に発表された内容は、市場の不安を絶望に変えるものでした。

  • 業績予想の取り下げ:
    • 第三者委員会の調査状況などを踏まえ、2026年3月期の業績予想を「取り下げる」と発表。
    • これは「現時点でどれだけの損失が出るか全く見通せない」ことを意味します。
  • 株主還元の停止:
    • これまで「20円」と予想していた中間配当を「無配」に修正
    • 期末配当も「未定」に。
    • 5月に発表していた自社株買いを「中止」すると発表。(実際、5月28日から10月23日まで一度も実施されていませんでした)

業績の先行きが完全に不透明になった上、株主への還元策(配当・自社株買い)まで停止されたことで、「この会社は大丈夫なのか?」という根本的な信頼が揺らぎ、株価は続急落となりました。

配当が無配となったら長期投資の人もニデックに投資している意味がなくなってしまうので売る人が増えそうです。。

③2025年10月28日:「特別注意銘柄」指定と「日経平均」除外

悪材料は止まりません。10月27日の取引終了後、ニデックの株価にとって「とどめ」とも言える2つの発表がなされました。

  1. 「特別注意銘柄」への指定(東証):
    • 東京証券取引所は、ニデックを10月28日付で「特別注意銘柄」に指定すると発表。
    • これは、財務諸表の監査報告書で「意見不表明」が記載され、内部管理体制の改善の必要性が極めて高いと認められたためです。
  2. 「日経平均株価」からの除外(日本経済新聞社):
    • 日本経済新聞社は、ニデックを日経平均株価の構成銘柄から11月5日付で除外すると発表。(後任はイビデン<4062>)

「特別注意銘柄」とは?
東京証券取引所が「内部管理体制などに重大な問題があり、このままでは上場廃止になるリスクがある」と判断した銘柄に対して指定するものです。
改善が見られない場合、最終的には「上場廃止」という最悪のシナリオも待っています。

これにより、翌10月28日のニデック株は一時ストップ安(前日比500円安の2071円)まで売り込まれました。

「特別注意銘柄」という不名誉なレッテルによる信用の失墜と、日経平均(日経225)に連動するインデックスファンドからの「機械的な売り(パッシブ売り)」が大量に出ることへの懸念が、市場全体をパニックに陥れたのです。

参照:https://kabutan.jp/stock/news?code=6594

2. ニデック(Nidec)とはどんな会社か?

今回、深刻な問題が発覚したニデックですが、本来は日本が世界に誇る優良企業の一つでした。

その事業内容と強みを再確認しておきましょう。

  • 事業内容:
    • ニデックは、世界トップシェアを誇る「精密小型モーター」の巨人です。
    • 「回るもの、動くもの」すべてが事業領域で、ハードディスクドライブ(HDD)用モーターで世界を席巻して以来、家電(冷蔵庫、エアコン)、産業機器、そして近年ではEV(電気自動車)向けなど、幅広く事業を展開しています。
  • 強みと戦略:
    • ニデックの強みは、その高い技術力と、積極的なM&A(企業の合併・買収)による成長戦略にあります。
    • 特に近年は、EVの基幹部品である駆動モーターシステム「E-Axle(イーアクスル)」を「第二の創業」と位置づけ、巨額の投資を行ってきました。
    • 市場の期待もこのEV事業に集まっていました。

参照:https://www.nidec.com/jp/ir/management/summary/

3. 今後の株価はどうなる?

投資家にとって最大の関心事は「株価はどこまで下がるのか、そして反発はいつか」でしょう。

冷静に、二つの側面から分析します。

ファンダメンタル分析:業績への影響は?

元の業績はどうだったのか?

決算資料を見ると、問題発覚前のニデックは「踊り場」を抜け出し、「再成長」へ向かうシナリオが期待されていました。

  • 2023年3月期:
    • 売上高は2.2兆円と過去最高でしたが、営業利益は前期比47%減の約900億円に落ち込みました。
    • これは、EV事業への巨額の先行投資や、中国市場の減速が響いたためです。
  • 2024年3月期:
    • 売上高2.3兆円、営業利益1618億円とV字回復を見込んでいました。
  • 2025年3月期:
    • 売上高2.6兆円、営業利益2381億円と、過去最高益を大幅に更新しました。
  • 2026年3月期(予想):
    • 売上高2.6兆円、営業利益2600億円と過去最高益を更新し成長期待されていました。
    • 今回の不正会計疑惑がなければ!

つまり、市場は「2023年3月期を底として、EV事業の投資が実を結び、2024年3月期以降は急回復する」という高成長ストーリーを信じていたのです。

不適切会計の影響は?

今回の問題は、この高成長シナリオの根幹を根底から覆すものです。

  • 利益の先送り:
    • 「評価減の時期を恣意的に検討」していた疑いが事実であれば、本来はもっと早く(例えば2023年3月期以前に)計上すべきだった損失を、意図的に先送りしていた可能性が出てきます。
  • 過去決算の修正:
    • もしこれが事実なら、V字回復を見込んでいた2024年3月期や、底だと思われていた2023年3月期の利益が、遡って下方修正される(=過大に計上されていた)ことになります。
  • 損失規模の不透明性:
    • 業績予想を取り下げたのは、「損失の全貌が不明」だからです。
    • 子会社の2億円に留まらず、経営陣が関与した「評価損の先送り」が全社的に行われていたとしたら、その損失額は数百億、あるいはそれ以上になる可能性もゼロではありません。

ファンダメンタルズ面での懸念は、①損失規模が不明、②内部統制が崩壊している(ガバナンス不全)、③EV事業という本業の成長戦略にまでブレーキがかかる、という三重苦です。

全貌が明らかになるまで、ニデックの「本当の業績」は誰にもわからず、投資判断の土台そのものがない状態です。

「仮に不正会計疑惑が晴れる」or「不正会計が2億円のみで経営改善がされた」場合は急落前の株価まで戻る可能性は高いです。

そのため、どうしてもニデックの株を買いたいなら不正会計疑惑が晴れるまで買わないのが良いでしょう!

テクニカル分析:下値の目処は?

次に、テクニカル(株価チャート)を見てみましょう。

  • 現状:
    • 8月25日の高値3296円から、9月(第一報)、10月(業績取り下げ)、10月末(特別注意銘柄)と、3段階の「窓開け」を伴う暴落となっています。
    • 移動平均線(5日・25日・75日)はすべて下向きの「パーフェクトオーダー」を形成しており、完璧な下降トレンドです。
    • 10月29日には一時1892.5円まで売られ、終値は1960円。2000円の大台を明確に割り込みました。
  • どこまで株価が下がる?:
    • 当面の下値支持線:
      • まずは10月29日に付けた安値「1892.5円」です。
      • この日は8600万株を超える歴史的な大商いを記録しており、ここで投げ売りが出尽くしたかどうかが焦点です。
      • このラインを維持できなければ、下落は止まりません。
    • 次の節目:
      • 1892.5円を割り込んだ場合、次の心理的な節目は「1500円」が意識されます。
    • 上値の抵抗線:
      • 反発しても、2200円付近と2500円付近に開けた大きな「窓」が、強力な抵抗帯(レジスタンス)として立ちはだかります。
  • テクニカル上のシナリオ:
    • 短期的には、10月29日の大商いで「セリング・クライマックス(売りの最終局面)」を迎え、1900円前後で底を固める(あるいは自律反発する)可能性もあります。
    • しかし、ファンダメンタルズ(日経平均除外に伴う実需売り、悪材料の不透明感)を考慮すると、本格的な底打ちはまだ先と見るべきでしょう。
    • リバウンドしても上値は重く、第三者委員会の報告などで更なる悪材料が出れば、1892.5円の安値を割り込み、1500円を目指す展開も十分に想定されます。

4. まとめ

ニデックの株価急落の真相は、単なる業績悪化ではなく、「不適切会計」という企業統治の根幹を揺るがす問題でした。

その結果、「業績予想の取り下げ」「無配転落」「自社株買いの中止」という株主への裏切り、そして「特別注意銘柄」「日経平均除外」という市場からのレッドカードを突き付けられました。

EV向けモーター「E-Axle」という強力な成長ストーリーを持っていただけに、今回の事態は非常に残念です。 今後の株価の行方は、

  1. 第三者委員会の調査結果(損失の全貌解明)
  2. 経営陣の刷新と、内部統制の抜本的な改革
  3. テクニカル上の安値(1892.5円)を死守できるか にかかっています。

投資家は、感情的な「投げ売り」や安易な「逆張り買い」を避け、まずは損失の全貌が明らかになるのを待つ「様子見」が賢明な判断と言えるかもしれません。

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
https://blog-hero.com/