アメリカが利下げすると株価への影響はどうなるか?2025年の利下げ回数は?

利下げ 株の知識

アメリカの金融政策、特にFRB(連邦準備制度理事会)による金利の動向は、日本を含む世界中の株式市場に絶大な影響を与えます。

歴史的なインフレを抑制するために続いてきた利上げサイクルが終わりを迎え、市場の関心は「いつ、どのくらいのペースで利下げが行われるのか」に集まっています。

この記事では、アメリカが利下げを行った際の株価への影響をわかりやすく解説します!

結論

先に結論からお伝えします。

①利下げの背景には、経済の鈍化やインフレ率の低下、雇用市場の弱体化などの理由がある。
「良い利下げ」(ソフトランディング成功)なら株価は上昇しやすいが、「悪い利下げ」(景気後退入り)なら株価は下落するリスクがある。
③利下げはグロース株(成長株)にとって特に強い追い風となる。
④為替はドル安・円高方向に進みやすく、日本の輸出企業には逆風となる可能性がある。
⑤2025年の利下げは年後半から2〜3回との見方が有力だが、全ては今後の経済指標次第。

それでは、これらの結論に至る背景を一つずつ詳しく見ていきましょう。

1. なぜ今、アメリカの「利下げ」が注目されるのか?

米国政策金利

そもそも、なぜこれほどまでに利下げが市場のテーマになっているのでしょうか。

それは、2022年から始まった急激な「利上げ」の反動です。

歴史的なインフレとの戦い

コロナ禍以降、供給網の混乱や旺盛な需要を背景に、アメリカは歴史的なインフレに見舞われました。

FRBは物価を安定させるという使命を果たすため、政策金利を急速に引き上げ、経済を意図的に冷やそうとしました。これが「利上げ」です。

利下げが視野に入った理由

強力な利上げの効果もあり、2023年後半からインフレは明確な鈍化傾向を示しています。

物価上昇が落ち着いてきたことで、FRBは高金利が経済に与えるダメージに配慮し、金利を引き下げる「利下げ」を検討する段階に入りました。

つまり、「インフレ抑制」という目的が達成されつつあるため、次のステップとして「経済の安定的な成長」に軸足を移すのが、現在の状況なのです。

過去の米利下げ後の株価はどうなるのかをチャートとデータを見て解説しているのでこちらも参考にしていただければと思います!

2. 利下げが株価に与えるプラスの影響

利下げは、様々なルートを通じて株価にプラスの影響を与えます。

① 企業の資金調達コストが低下する

最も直接的な影響です。金利が下がると、企業が銀行からお金を借りる際のコストが安くなります。

これにより、企業は以下のような前向きなアクションを取りやすくなります。

  • 設備投資の拡大:新しい工場や機械を導入し、生産能力を高める。
  • 研究開発(R&D)への投資:新技術や新製品を開発し、将来の競争力を確保する。
  • M&A(企業の合併・買収):事業規模を拡大し、市場シェアを高める。

これらの活動は企業の将来的な利益成長につながり、株価を押し上げる大きな要因となります。

② 個人消費が活発になる

利下げは、住宅ローンや自動車ローンといった個人の借り入れ金利も低下させます。

これにより、消費者の可処分所得が増え、購買意欲が高まります。

消費が活発になれば、小売業やサービス業など、幅広い企業の売上が伸び、経済全体が潤います。

③ 株式の「割高感」が薄れる(特にグロース株)

少し専門的になりますが、これは非常に重要なポイントです。

「金利は株価の重力」とも言われます。

企業の株価を理論的に評価する方法の一つに、「将来生み出す利益を、金利(割引率)で現在の価値に割り引く」という考え方があります。

金利が高いと、将来の利益の価値は大きく割り引かれてしまい(重力が強い状態)、株価は上がりにくくなります。

逆に利下げ局面では、この割引率が低下するため、将来の利益の現在価値が高く評価されます(重力が弱い状態)。

これは、特に将来に大きな成長が期待されるグロース株(ハイテク企業など)にとって、強力な追い風となります。

3. 利下げが為替(ドル円)に与える影響

利下げの影響は、為替市場にも及びます。結論から言うと、アメリカの利下げは「ドル安・円高」を招きやすくなります。

日米金利差の縮小

投資家は、より金利の高い国の通貨を保有して運用したいと考えます。

アメリカが利下げを行う一方、日本銀行が金融緩和の縮小(事実上の利上げ)を進めると、「日米の金利差」は縮小します。

これにより、高金利通貨としてのドルの魅力が相対的に低下し、投資家はドルを売って円を買う動きを強めます。これがドル安・円高につながるメカニズムです。

この円高は、日本の株式市場に以下のような影響を与えます。

  • 輸出企業(自動車、電機など):海外での売上が円換算で目減りするため、業績にマイナス
  • 輸入企業(資源、食品など):海外からの仕入れコストが下がるため、業績にプラス

4. 【本題】2025年、アメリカの利下げはどうなる?

ここからが本題です。2025年の利下げについて、現在の市場の見通しを解説します。

予想:2025年後半から、年2回の利下げが有力

米国政策金利

現在の米国政策金利は4.25%となっています。

現時点でのFRB関係者の発言や、市場エコノミストの予測を総合すると、

最初の利下げは2025年の後半(7月〜9月頃)に開始され、年末までに合計で2回(0.5%)程度の利下げが行われるという見方がコンセンサスとなっています。

ただし、これはあくまで現時点での予測です。FRBは「データディペンデント」という姿勢を強調しており、今後の経済指標の結果次第で、このシナリオは大きく変わる可能性があります。

5. 2026年以降の展望と「悪い利下げ」のリスク

利下げは一度始まれば、それで終わりではありません。2026年以降、金融政策はどうなるのでしょうか。

中立金利への回帰

FRBは最終的に、経済を過熱も冷却もしない「中立金利」と呼ばれる水準まで政策金利を戻すことを目指しています。

この中立金利は現在2.5%〜3.0%程度と推測されており、利下げサイクルは2026年も継続し、この水準に落ち着く可能性が高いと考えられます。

注意すべきリスク:「良い利下げ」か「悪い利下げ」か

最も重要なのは、利下げがなぜ行われるかです。これには2つのシナリオがあります。

シナリオA:良い利下げ(ソフトランディング)

これは、インフレが順調に目標の2%に収束し、景気が後退することなく軟着陸(ソフトランディング)に成功する中で行われる「予防的な利下げ」です。

この場合、経済の先行きに対する安心感が広がり、株価は素直に上昇する可能性が高いでしょう。

シナリオB:悪い利下げ(リセッション)

これは、インフレ抑制のために続けた高金利政策が効きすぎてしまい、経済が景気後退(リセッション)に陥ってしまうシナリオです。

失業者が急増し、企業業績が急速に悪化する中で、FRBが慌てて行う「緊急的な利下げ」となります。

この場合、利下げそのものよりも景気悪化への懸念が市場を支配し、株価は大きく下落するリスクがあります。

参照:https://jp.tradingeconomics.com/united-states/interest-rate

6. 利下げ局面での投資戦略

では、私たちは具体的にどのような投資戦略を考えればよいのでしょうか。

① グロース株(特にハイテク株)への投資

前述の通り、金利低下はグロース株にとって最大の追い風です。

特に、AI(人工知能)、半導体、ソフトウェアといった分野は、長期的な成長ストーリーが明確であり、金利低下による株価上昇の恩恵を最も受けやすいセクターと言えるでしょう。

② 高配当株の魅力も見直す

金利が低下すると、国債などの安全資産の利回りが低下します。

そのため、相対的に利回りの高い「高配当株」の魅力が増し、資金が流入しやすくなります。

ただし、景気後退リスクも考慮し、単に配当利回りが高いだけでなく、業績が安定しており、減配リスクの低い優良企業を選ぶことが重要です。

③ 分散投資を徹底する

「良い利下げ」と「悪い利下げ」のどちらのシナリオが訪れるかは、誰にも確実には予測できません。

だからこそ、特定の銘柄やセクターに投資を集中させるのではなく、複数の資産に分散投資を行うことがリスク管理の基本となります。

景気動向に左右されにくい生活必需品やヘルスケアセクターの銘柄をポートフォリオに組み入れたり、債券への投資も検討したりすることで、市場の急変に備えることができます。

まとめ

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • アメリカの利下げは、企業の成長を促し、株式市場全体にプラスの影響を与える可能性が高い。
  • 2025年後半から複数回の利下げが見込まれるが、そのペースや回数は今後のインフレや雇用情勢次第。
  • 最も重要なのは、利下げの背景が「景気の軟着陸(良い利下げ)」なのか、「景気後退(悪い利下げ)」なのかを見極めること。
  • 投資戦略としては、グロース株を中核に据えつつ、高配当株や他の安定セクターへの分散投資でリスクに備えることが賢明。

金融政策の転換点は、投資家にとって大きなチャンスであると同時に、リスクも伴います。

FRBの発表や日々の経済ニュースに注意を払いながら、冷静かつ長期的な視点で、賢い資産運用を心掛けていきましょう!

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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