なぜ日立製作所の株価が上昇したのか?今後の株価も予想!

日立製作所 上昇理由 個別銘柄分析

2025年10月3日、日本の株式市場で大きな注目を集めた銘柄があります。それは、日本を代表する総合電機メーカー「日立製作所(証券コード:6501)」です。

この日、日立製作所の株価は前日比で10%以上も急騰し、4,300円という高値で取引を終えました。

出来高(株の売買が成立した数量)も平常時の4倍以上となる約4400万株に達し、市場がいかにこのニュースに熱狂したかがうかがえます。

「なぜ、突然日立の株価がこんなに上がったの?」

「この上昇は一時的なもの?それとも、まだ上がるの?」

多くの投資家がそう思ったことでしょう。

結論から言うと、この株価急騰の最大の要因は、生成AI「ChatGPT」で世界を席巻する米OpenAI(オープンAI)との戦略的パートナーシップ締結というビッグニュースでした。

この記事では、株式投資の初心者の方にも分かりやすく、以下の内容を徹底解説していきます。

・日立製作所ってどんな会社?
・なぜオープンAIとの提携で株価がこれほどまでに上昇したのか?
・今後の日立製作所の株価はどうなる?(ファンダメンタル・テクニカル両面から分析)

この記事を読めば、日立製作所の現状と将来性を深く理解し、ご自身の投資判断に役立てることができるはずです!

1. なぜ日立製作所の株価が上昇したのか?

まずは結論からです。
なぜ2025年10月3日、日立製作所の株価はこれほどまでに急騰したのでしょうか。

最大の理由は「オープンAIとの戦略的パートナーシップ」

冒頭でも触れた通り、株価上昇の最大の起爆剤となったのは、米オープンAIとの戦略的パートナーシップに関する基本合意書の締結です。

このニュースが伝わると、投資家の期待が一気に膨らみ、買い注文が殺到しました。

協業の軸になるのはAIデータセンターへの送配電設備の供給となるもようで、オープンAIのデータセンター整備が業容拡大につながるとの期待感先行したといった理由になります。

では、なぜこの提携がそれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、現代のテクノロジーが直面する「電力問題」と深く関係しています。

AI時代が抱える「電力不足」という深刻な課題

ChatGPTのような生成AIは、非常に高度な計算を行うために、膨大なデータを処理する「データセンター」を必要とします。

特に、AIの学習や運用には高性能なGPU(画像処理半導体)が何千、何万個も使われ、これらが莫大な電力を消費します。

つまり、今後のAI産業の発展は、「いかにしてデータセンターの膨大な電力を安定的に確保し、同時にエネルギー効率を高めるか」という課題を克服できるかにかかっているのです。

OpenAIが日立に期待していること

今回の提携の核心は、日立が持つエネルギー関連技術とインフラ技術を、オープンAIのAIデータセンターに提供することにあります。

具体的に日立が貢献できる分野は、主に以下の3つです。

1. 高効率な送配電・受変電システム

データセンターは、発電所から送られてくる超高圧の電力を、サーバーが使える電圧まで変換(変電)する必要があります。

この過程で電力ロスが発生しますが、日立エナジーが持つ世界最先端の変圧器や送配電システムは、この電力ロスを最小限に抑え、エネルギー効率を最大化することができます。

2. 最適な冷却・空調技術

データセンターに密集するサーバーは、膨大な熱を発します。この熱を効率的に冷却できなければ、サーバーはすぐに故障してしまいます。

実は、データセンターの消費電力のうち、約4割がこの冷却用空調に使われていると言われています。

日立は長年のビルシステムや産業用機器の開発で培った高度な空調・冷却技術を持っており、これを応用することで、冷却にかかる消費電力を大幅に削減することが可能です。

OpenAIが計画しているデータセンターへの投資

OpenAIは、将来のAIモデル開発に必要な膨大な計算能力を確保するため、「Stargate(スターゲイト)」というコードネームの巨大プロジェクトを計画していると報じられています。

その規模は非常に壮大で、具体的な数字としては以下のものが挙げられます。

  • 総投資額: プロジェクト全体の費用として、最大で1000億ドル(日本円で約15兆円)に達する可能性があるとされています。
  • 長期的な構想: さらに長期的な視点では、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、AIの発展のために最大で7兆ドル(日本円で約1050兆円)という、さらに桁違いの資金調達が必要になる可能性を示唆しています。

これほどの巨大施設を安定稼働させるためには、膨大な電力を効率的に供給・管理する技術が不可欠です。

日立製作所が持つ高度なエネルギー関連技術は、まさにこの巨大プロジェクトの根幹を支えるものであり、だからこそ市場は今回の提携を非常に高く評価した、とご理解いただければと思います。

2. 日立製作所(6501)とは?

まず、日立製作所がどのような会社なのか、簡単におさらいしておきましょう。

日立製作所は、1910年に創業された日本を代表する巨大コングロマリット(複合企業)です。

一般的には家電製品のイメージが強いかもしれませんが、現在の事業ポートフォリオは非常に多岐にわたります。

現在の事業セグメントは大きく分けて以下の3つです。(言葉だけじゃ何をしているか分かりませんねw)

  1. デジタルシステム&サービス:
    • システムインテグレーション(SI)、コンサルティング、クラウドサービスなど。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する事業です。
  2. グリーンエナジー&モビリティ:
    • 発電所などのエネルギーシステム、鉄道システム、ビルシステムなど、社会インフラを支える事業です。
    • 特に傘下の日立エナジーは、送配電システムで世界トップクラスの技術力を誇ります(この分野が今回のOpenAIが期待しているところだと思います)
  3. コネクティブインダストリーズ:
    • 半導体製造装置、計測分析システム、産業用機器など、さまざまな産業の基盤を支える事業です。

売上割合では綺麗に分散していますが、現在の売上の中心は「グリーンエナジー&モビリティ」と「デジタルシステム&サービス」であり、社会インフラとITを融合させたソリューション提供に強みを持っています。

特に、独自のデジタルソリューション基盤「Lumada(ルマーダ)」を活用し、顧客企業の課題解決や社会イノベーションの創出を加速させている点が、近年の成長の原動力となっています。

参照:https://www.hitachi.co.jp/recruit/newgraduate/special/infographics.html

3. 今後の株価を考察

では、日立製作所の今後の株価はどのように推移していくのでしょうか。

「ファンダメンタル(業績や財務)」と「テクニカル(株価チャート)」の両面から分析していきましょう。

ファンダメンタル分析

上の表は、日立製作所の近年の業績と今後の会社予想です。

これを見ると、2024年3月期までは売上高が横ばいに見えますが、これは事業の選択と集中を進めた結果です。

不採算事業を売却し、成長分野である「デジタル」と「グリーン」に経営資源を集中させたことで、利益率が大きく改善しています。

注目すべきは、2025年3月期以降の力強い利益成長です。本業の儲けを示す営業利益は、2026年3月期には1兆円の大台に乗る予想となっており、これは過去最高益となります。

現在の株価を投資指標で見ると、2025年10月3日時点でPER(株価収益率)は約27倍、PBR(株価純資産倍率)は約3.3倍となっています。

これは同業のパナソニックHD(PER約11倍)や三菱電機(PER約16倍)と比較すると割高に見えるかもしれません。

しかし、これは市場が日立を単なる電機メーカーではなく、AIやDXを牽引する「成長企業(グロース株)」として評価していることの表れです。

今回のオープンAIとの提携は、この成長ストーリーをさらに加速させるものであり、ファンダメンタルズの観点からは、中長期的な株価上昇を支える強力な材料と言えるでしょう。

今回のOpenAIとの提携での業績への影響は?

今回の提携が具体的にどのくらいの売上・利益につながるかは、現時点では公表されていません。

世界中でAIデータセンターの建設ラッシュが続く中、オープンAIという業界のトップランナーと組むことで、日立はこの巨大市場で先行者利益を獲得できる可能性があります。

日立エナジー事業の年間売上高は1兆円を超えており、ここにデータセンター関連の大型案件が加われば、業績に与えるインパクトは非常に大きいでしょう。

今回の株価急騰は、この壮大な未来への「期待感」が先行したものと言えます。

そのため、具体的に業績に反映or漠然とした連携ではなく具体的な内容のニュースなどが今後続かない限り一時的な株価上昇で終わるといった可能性も大いにあります。

テクニカル分析

次に、株価の値動きそのものを分析するテクニカル分析です。

10月3日の日足チャートは、テクニカル分析において非常に重要な示唆を与えています。

  • マドを開けての急騰:
    • 前日の終値(3,900円)から大きくかい離した価格(始値4,120円)で取引が始まることを「マドを開ける」と言います。
    • 出来高を伴って大きな陽線(始値より終値が高い)と共にマドを開けた場合、非常に強い買いのエネルギーを示しており、上昇トレンドの始まりを示唆する典型的なサインです。
  • 上値のターゲット:
    • まず意識されるのは、今回の高値である4,321円です。
    • ここを明確に超えてくると、次は2025年7月31日につけた年初来高値4,697円がターゲットとして視野に入ってきます。
    • しかし、急な上昇では利確売り等で一時調整などがあるため数日で年初来高値付近にいくのは難しいかもしれません。
  • 下値のサポート:
    • もし調整する場面があれば、まずは25日移動平均線(約3,980円)が支持線(サポート)として機能するかどうかが注目されます。
    • また、今回開けたマド(3,900円〜4,120円)も強力なサポート帯となる可能性があります。

チャート形状から見ても、これまでの揉み合い(ボックス相場)を上に抜け出し、新たな上昇トレンドが始まった可能性が高いと判断できます。

そのため、今後日立株にどれだけ資金が流れてくるか、出来高が増加するかが株価上昇のカギとなると思うので、一旦急上昇は様子見して出来高が増加していることを確認でき、かつ株価が上昇して上昇トレンドになっていれば買いタイミングかもしれません。

4. まとめ

今回は、2025年10月3日に急騰した日立製作所の株価について、その背景と今後の見通しを詳しく解説しました。

最後に、この記事の要点をまとめます。

以上の点から、日立製作所は、AIという現代最大のテクノロジートレンドの根幹を支えるキープレイヤーとして、大きな飛躍の時を迎えようとしていると言えるでしょう。

もちろん、株式投資に絶対はありません。今後のオープンAIとの協業の進捗や、世界経済の動向によっては株価が変動する可能性もあります。

しかし、今回のニュースが日立製作所の企業価値を大きく押し上げるきっかけとなったことは間違いありません。

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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