【核融合】なぜ助川電気工業の株価が上昇したのか?今後の株価も予想!

なぜ助川電気の株価が上昇しているのか? 個別銘柄分析

2025年9月に入り、東京証券取引所スタンダード市場に上場する助川電気工業(証券コード:7711)の株価が市場の注目を一身に集めています。

この現象を目の当たりにして、多くの人がこう思ったはずです。「この急騰は、政治的な思惑による一時的なバブルなのか?それとも、長期的な成長に向けた企業のファンダメンタルズが正当に評価され始めた結果なのか?」

本記事では、この疑問に答えるべく、助川電気工業という企業のユニークな事業内容から、株価を押し上げた二重のカタリスト、そして詳細な財務分析とテクニカル分析を通じて、同社の将来性を多角的に徹底解剖します!

1. 助川電気工業とは?事業内容など

助川電気工業を単なる製造業と捉えるのは、その本質を見誤ることになります。

その核心技術は「熱と計測」の分野、特に高温や放射線といった極限環境下での精密な制御技術にあります。

シーズヒーターやシース型熱電対といった特殊な製品群は、同社の技術力の高さを物語っています。

この独自技術が最も活かされているのが、次世代エネルギー分野です。

  • エネルギー関連事業:
    • 主要な製品は、原子力発電の安全性向上や火力発電所の高効率化を目的とした装置、ならびに核融合関連の試験研究装置に使用されています。
    • この分野の中でも核融合分野が現在の注目点の核心です。
    • 同社は、究極のクリーンエネルギーとして期待される核融合発電の実現に向けた国家的な、そして国際的なプロジェクトに深く関与しています。
    • 具体的には、国際核融合実験炉「JT-60SA」の炉内センサーを受注した実績があり、核融合炉の重要部品に関する液体金属ループ装置なども開発しています 。
  • 産業システム関連事業:
    • 主要な製品は、鉄鋼・自動車・半導体・FPD等の製造装置の「熱と計測」に関する部分に広く使用されています。
  • 溶融金属関連事業:
    • 主要な製品は、自動車のアルミニウム鋳造品の製造を目的としたアルミ用電磁ポンプ、給湯装置、鋳造装置等です。

どの核融合技術が最終的に主流になるかを当てるのは困難ですが、どの技術であっても極限環境に耐えうる高品質なセンサーや加熱・冷却装置は不可欠です。

助川電気工業は、この (急成長する)産業全体に必須のコンポーネントを供給する立場にあり、これは特定のプロジェクトの成否に左右されにくい、より堅牢な長期投資の対象となり得ることを示唆しています。

2. なぜ助川電気工業の株価が上昇したのか?

今回の株価急騰は、単一の要因ではなく、「好業績」という土台と「政治的期待」という追い風が重なり合った結果、強力なフィードバックループが生まれたことで引き起こされました。

理由①:過去最高益を更新した「驚異的な業績上方修正」

政治的な思惑が市場を席巻する以前、助川電気工業の株価上昇の土台はすでに固められていました。

25年8月7日、同社は2025年9月期通期の業績予想を大幅に上方修正すると発表しました。

  • 売上高: 54億8000万円 → 57億円 (前期比 $14.8%増)
  • 営業利益: 10億2000万円 → 12億1000万円 (前期比 $32.0%増)
  • 純利益: 7億2400万円 → 8億2900万円 (前期比 $29.9%増)

この修正の背景として同社が挙げたのは、「研究機関向け新型炉評価試験などの原子力関連製品及び核融合関連製品が増加したこと」でした。

これは、同社の核となる事業が力強く成長していることを示す具体的な証拠です。さらに、この好調な業績を背景に、年間配当予想も従来の38円から40円へと引き上げました 。

これは株主への還元であると同時に、経営陣がこの高い収益性の持続性に自信を持っていることの力強い表明でもあります。

このタイミングが極めて重要です。業績修正が発表されたのは8月上旬であり、自民党総裁選を巡る思惑が本格化した9月よりも前でした。

株価チャートを見ると、8月下旬から株価が上昇トレンドに入っていることが確認できます。

つまり、株価上昇の第一波は、この驚異的なファンダメンタルズの改善を市場が消化する過程で起きたものであり、政治的なテーマが乗る前から株価には上昇する正当な理由があったのです。

この事実は、仮に政治的な熱狂が冷めたとしても、株価には以前より高い「基礎体力」が備わっていることを意味します。

理由②:「高市トレード」への期待

堅調なファンダメンタルズという土台の上に、強力な追い風を吹かせたのが政治の動きです。

石破首相の退任表明を受け、次期自民党総裁選が現実味を帯びると、市場の関心は「ポスト石破」の有力候補とその政策へと向かいました。

その中で有力候補の一人と目される高市早苗氏が、かねてより核融合発電の導入に積極的な姿勢を示していることが市場で強く意識されました。

彼女が総裁に就任すれば、核融合関連の国家プロジェクトが加速し、関連予算が大幅に増額されるのではないか――。こうした期待から、投資資金が関連銘柄へと殺到しました。  

この現象は「高市トレード」と呼ばれ、助川電気工業はJT-60SAでの実績から、その中核銘柄として位置づけられることになりました。

3. 今後の株価を多角的に分析

3.1. ファンダメンタル分析

政治的な思惑が絡むと株価は短期的に乱高下しがちですが、長期的な企業価値を測る上でファンダメンタルズの分析は不可欠です。

収益性の加速

業績推移を見ると、同社の収益性が近年著しく向上していることがわかります。

特に2025年9月期の会社予想(売上高57億円、営業利益12.1億円)に基づくと、営業利益率は21.2%に達する見込みです。

これは製造業として非常に高い水準であり、同社の技術的な優位性と価格決定力を示唆しています。

財務基盤

同社の隠れた強みである財務の健全性を示しています。  

  • 自己資本比率:
    • 2022年9月期の54.6%から2025年第3四半期には63.8%へと着実に上昇しています。
    • 一般的に50%を超えると非常に健全とされ、負債への依存度が低く経営が安定していることを示します。
  • 有利子負債倍率:
    • 0.39倍から0.23倍へと低下しており、財務規律が徹底されていることがうかがえます。
  • 1株当たり純資産 (BPS):
    • 620.56円から765.04円へと順調に増加しており、企業の本質的な価値が年々積み上がっていることを示しています。

参照:https://kabutan.jp/stock/finance?code=7711

3.2. テクニカル分析

株価チャートは、典型的な「パラボリック・ライズ(放物線状の上昇)」を描いています。これは非常に強いモメンタムを示していますが、同時に短期的な過熱感も示唆します。

  • 出来高の急増:
    • 9月の株価急騰に伴い、出来高も爆発的に増加しています。
    • これは多くの投資家の関心を集めている証拠ですが、高値圏で買った投資家が多いことを意味し、下落局面では売りが売りを呼ぶ展開につながるリスクも内包しています。
  • 移動平均線乖離率:
    • 短期的な過熱感を測る指標として、移動平均線からの乖離率が参考になります。
    • 9月19日時点で株価は5,790円、25日移動平均線(MA25)は約3,800円に位置しており、その乖離率は約52%に達します。
    • これは過去の最大乖離率40%という水準を大きく上回っており、短期的な調整が入る可能性が非常に高いことを示唆しています。
  • 過去の総裁選での株価:
    • 「前回の総裁選では株価1500円から2300円まで上昇して下落」したという経緯があります。
    • これは政治テーマ株に典型的な「噂で買って、事実で売る(Buy the rumor, sell the news)」というパターンです。
    • 総裁選の結果が判明した時点で、期待という材料はいったん出尽くしとなり、利益確定売りに押されるリスクは十分に警戒すべきです。
    • ただし、前回と異なるのは、現在の助川電気工業がはるかに強固な業績基盤を持っている点であり、下落したとしても、より高い水準で株価がサポートされる可能性はあります。

シナリオ分析

現在の株価は過熱感がありますが、今後の総裁選などがあることを考えるとまだトレンド追随で上昇していくことも考えられます。

目先としては6000円が意識され、もし高市氏が総裁選で勝利をするとなるとまだ上昇する見込みがあります。

一方で再度総裁選で敗れた場合は、20~30%の下落は意識しておいた方がいいでしょう(4500円くらい?)。

4. まとめ

助川電気工業は、核融合という長期的な成長分野で独自の技術的優位性を持ち、財務も健全な優良企業です。

そのファンダメンタルズの強さが、政治的な追い風という強力なカタリストを得て、株価は記録的な上昇を遂げました。

これは高いリターンをもたらす可能性がある一方で、相応の短期的なリスクを伴う状況ということは覚えておくのがいいでしょう!

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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