なぜコクサイエレクトリックの株価が上昇したのか?今後の株価も予想!

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2025年9月、株式市場でひときわ強い輝きを放った銘柄があります。

半導体製造装置メーカーのKOKUSAI ELECTRIC(証券コード:6525)、通称「コクサイエレ」です。

同社の株価は9月に入ってから怒涛の上昇劇を演じ、9連騰を記録しています。年初来高値を更新し、市場の心理的な節目である4,000円の大台を軽々と突破しました。

この急騰を目の当たりにした多くの投資家が、今まさに「なぜこれほどまでに買われているのか?」そして「この勢いは本物なのか?」という疑問を抱いていることでしょう。

本ブログでは、「なぜ株価が上昇しているのか?」「ファンダメンタル分析」「テクニカル分析」について解説していきます!

1. KOKUSAI ELECTRICとは?

KOKUSAI ELECTRICは、半導体製造における「前工程」と呼ばれるプロセスを担っています。

その中でも特に「成膜」と「トリートメント(膜質改善)」という、半導体の性能を根幹から左右する極めて重要な工程に特化した装置メーカーです 。

「成膜」とは、シリコンという素材でできた円盤(ウェーハ)の上に、原子レベルの極めて薄い膜を何層にもわたって精密に積み重ね、電子回路の土台を作り上げる技術です。

この工程の精度が、最終的に完成する半導体チップの処理能力や省電力性能を決定づけるため、まさに半導体製造の心臓部と言えます。

同社は、この繊細かつ重要なプロセスを担う装置の開発・製造・販売から、その後の保守サービスまでを一貫して手掛けています。

参照:https://www.kokusai-electric.com/company/business

2. なぜコクサイエレの株価が上昇したのか?

理由①:AI半導体とデータセンター投資の爆発

今回の株価急騰の背景には、いくつかの要因が複合的に絡み合っています。

オラクルの決算発表後に本格化したAI半導体関連株やデータセンター関連株への物色意欲の高まりを追い風として株価が上昇しました。

GoogleやMeta、そしてOpenAIとの協業でソフトバンクグループが計画する「Stargate Project」など、世界の名だたるIT企業が数兆円から数十兆円規模の設備投資計画を次々と発表しています。

この巨大な投資の波は、サーバーやネットワーク機器はもちろんのこと、その心臓部であるAI半導体の需要を爆発的に押し上げ、ひいてはそれらを製造するための装置業界全体に、かつてないほどの追い風を吹かせているのです。

コクサイエレ以外にも「SCREENホールディングス」や「TOWA」や「メック」など半導体関連銘柄も軒並み株価が上昇しているため、再半導体銘柄ブームがきているのでしょう。

理由②:AIバリューチェーンへの資金流入

株式市場では、まずNVIDIAのようなAIチップを設計・販売する「川下」の企業の株価が先行して大きく上昇しました。

その後、投資家の関心は「次なる成長株はどこか」という視点から、NVIDIAを支える製造装置や素材メーカーといった「川上」の企業群へと向かいました。

これは「セクターローテーション」と呼ばれる資金の流れであり、AIという巨大なテーマの恩恵がバリューチェーン全体に波及していく過程で起こる現象です。

この物色の流れの中で、KOKUSAI ELECTRICは、その圧倒的な技術的優位性と世界トップクラスのシェアという分かりやすい強みから、投資資金が集中する中核銘柄の一つとして選好されたと考えられます。

参照:https://www.witc.co.jp/blog/ae73um0i92v/

3. 今後の株価を徹底考察 – ファンダメンタルとテクニカルで分析

3.1 ファンダメンタル分析

業績:景気サイクルの底を脱し、AI需要を追い風にV字回復へ

24年3月期は、売上高1,808億円、営業利益307億円と、前の期に比べて減収減益となりました。

これは、スマートフォンやPC需要の一巡など、半導体市場全体の調整局面(シリコンサイクル)の影響を受けたものであり、想定の範囲内と言えます。

重要なのはその先、2026年3月期の会社予想です。売上高は2,440億円(前期比$+2.1%増)、営業利益は492億円(前期比-4.1%減)と、見込んでいます。

2025年度から横ばいになっていますが、設備投資などのコストが増加し減益になっていると考えられます。

そのため、実際には企業自体は成長しているといった見方ができます。

また、AIブームはまだ継続していると思うので上方修正などで今後も売上利益がプラスになる可能性も期待できます。

財務健全性:鉄壁のバランスシートが語る安定性

次に、企業の財務体質を分析します。企業の安定性を示す自己資本比率は、2023年3月期の43.1%から、2025年3月期には58.2%へと着実に上昇する見込みです。

一般的に50%を超えると極めて優良とされる水準であり、外部環境の急変に対する抵抗力が非常に高いことを示しています。

同時に、有利子負債の状況を示す有利子負債倍率は、同期間で0.62倍から0.3倍へと半減する見通しです。

これは実質的な無借金経営に近づいていることを意味し、昨今のような金利上昇局面においても財務的な影響を受けにくい、盤石の財務基盤を誇っていると言えるでしょう。

バリュエーション(株価評価):競合他社比較で見る現在地

では、現在の株価は割高なのでしょうか、それとも割安なのでしょうか。

株価の割安度を測る代表的な指標であるPER(株価収益率)は、約27.3倍となっています。

この数値だけを見ても評価は困難なため、同じ半導体製造装置業界の主要企業と比較してみましょう。  

銘柄名時価総額(兆円)売上高成長率(来期予想)営業利益率(来期予想)予想PER(倍)
KOKUSAI ELECTRIC約1.0+32.1%21.5%27.3
東京エレクトロン約16.0+25.8%30.1%34.6
SCREEN HD約2.8+23.8%21.7%20.3
アドバンテスト約4.0+19.5%15.6%40.0前後

この表から分かるように、KOKUSAI ELECTRICのPERは、業界の巨人である東京エレクトロンや、AIテスト需要で評価の高いアドバンテスト(PER40倍前後で評価されることもある )と比較すると、特段に割高というわけではありません。

3.2 テクニカル分析

トレンドの強さ:出来高を伴ったブレイクアウト

次に、株価チャートから投資家の心理とトレンドの勢いを読み解きます。

9月からの急騰は、それまで続いていた3,500円近辺でのもみ合い(レンジ相場)を明確に上放れる「ブレイクアウト」であったことが確認できます。

ここで最も重要な点は、この株価の急騰が「出来高の急増」を伴っていることです。

「出来高は株価に先行する」「出来高はトレンドの信頼性を担保する」という相場格言があるように、商いが活発化しながらの上昇は、多くの投資家が新たな価値を見出して参加していることの証です。

一部の投機筋による一時的な吊り上げではなく、本質的な上昇トレンドであることを強く示唆しています。  

過熱感のシグナル:25日移動平均線からの「上方乖離率37%超」の意味

一方で、短期的な過熱感を示す危険なシグナルも点灯しています。

それが、「25日移動平均線との上方カイ離率が37%超」という数値です。

移動平均乖離率とは、現在の株価が移動平均線からどれだけ離れているかを示す指標で、「株価はいつか平均に回帰する」という性質を利用して相場の過熱感を測ります。

一般的に、25日移動平均線からの乖離率は、プラス15%~20%を超えると「買われすぎ」と判断され、調整(下落)が警戒される水準です。

今後のシナリオと注目すべき株価水準

これらの分析を踏まえると、今後の株価シナリオは以下のように想定されます。

  • シナリオ1(健全な調整):
    • 短期的な過熱感を冷ますため、株価が一旦調整局面に入る可能性が最も高いと考えられます。
    • その際の下値支持(サポート)の目処としては、まず①心理的節目である4,000円
    • ここを割り込んだ場合は、②前回の高値である3500円が意識されるでしょう。
  • シナリオ2(高値圏でのもみ合い):
    • 大きな下落とはならず、現在の4,000円台で横ばいの動き(コンソリデーション)となり、過熱したテクニカル指標が落ち着き、移動平均線が株価に追いついてくるのを待つ展開も考えられます。

いずれのシナリオにおいても、現在の極端な上方乖離率を考慮すると、ここからさらに高値を追う「追撃買い」はリスクが高いと言わざるを得ません。

4. まとめ

本記事の分析を総括すると、KOKUSAI ELECTRICの株価急騰は、決して根拠のないバブルではなく、複数の強力な要因に裏付けられたものであると結論付けられます。

  1. 構造的な追い風:
    • 生成AIの普及に伴う、データセンターへの歴史的な投資ブームが、同社の事業環境を強力に後押ししている。
  2. 技術的優位性:
    • 半導体の微細化が「2ナノ時代」へと進む中で、同社が世界をリードするバッチ式ALD成膜装置は、代替の効かない不可欠な技術となっている。
  3. 業績回復への期待:
    • 半導体市況の底入れと重なり、2025年3月期にはV字回復と大幅な収益性改善が見込まれており、これが株価に織り込まれ始めている。

これらは全て、同社の本質的な企業価値(ファンダメンタルズ)の向上を裏付けるものです。

KOKUSAI ELECTRICは、日本の半導体製造装置業界が世界に誇る、真の優良企業の一つです。

今回の分析を通じてその本質的な価値を深く理解した上で、市場の熱狂に惑わされず、冷静に最適なエントリーポイントを探ること。それこそが、投資の成果を最大化するための鍵となるでしょう!

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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