最近、株式市場で「売れるG」こと売れるネット広告社グループ(証券コード:9235)の株価が急上昇しており、特に2025年6月9日には一時2,000円の高値をつけるなど、大きな注目を集めています。
株価が短期間で大きく動くと、「何か特別な理由があるのでは?」「この勢いは続くの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな売れるGの株価がなぜこれほど上昇しているのか、その背景にある理由を初心者の方にも分かりやすく解説します。
さらに、会社の事業内容や財務状況、そして株価チャートの分析を通じて、今後の株価がどうなるのかについても考えていきます!
1. 会社概要:売れるGってどんな会社?
まず、売れるG(売れるネット広告社グループ株式会社)がどのような会社なのかを見ていきましょう。
同社は、東京証券取引所のグロース市場に上場しており、証券コードは「9235」です 。
売れるネット広告社グループ(9235)基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
会社名 | 売れるネット広告社グループ株式会社 (Ureru Net Advertising Group Co.,Ltd.) |
証券コード | 9235 |
市場 | 東証グロース |
本社所在地 | 福岡県福岡市早良区百道浜2丁目3-8 RKB毎日放送会館 4 階 |
事業内容 | D2C(ネット通販)支援クラウドサービス『売れるD2Cつくーる』の提供、ネット広告の費用対効果改善コンサルティング、 D2Cブランド(健康食品・化粧品)運営(子会社『オルクス』)、越境EC支援(子会社『売れる越境EC社』)、D2C業界特化M&A仲介(子会社『売れるD2C業界M&A社』)、法人向けWi-Fiレンタル(子会社『JCNT』)など、D2Cビジネスを多角的にサポート 。 |
上場日 | 2023年10月 |
代表者 | 代表取締役社長 CEO 加藤公一レオ氏 |
この表は、売れるGの基本的な情報をまとめたものです。
東証グロース市場に上場しているということは、成長性が期待される一方で、株価の変動リスクも比較的高い傾向があることを示唆しています。
事業内容
売れるGの主な事業は、D2C(Direct to Consumer:メーカーが消費者に直接商品を販売するビジネスモデル)を展開する企業を支援することです。

参照:https://images.app.goo.gl/d3Xz7s9fCQ46gFbZ7
主力サービスであるクラウド型ツール『売れるD2Cつくーる』(旧名称:『売れるネット広告つくーる』)は、実に2,600回以上の【A/Bテスト】を繰り返して得られたノウハウが詰まっています 。
A/Bテストとは、例えばウェブサイトのデザインや広告文などを2パターン(AとB)用意し、どちらがより高い成果(例えば、商品の購入率)を上げるかを実際に試して検証する方法です。
これにより、ネット広告の費用対効果を劇的に改善することを目指しています。
また、同社は「確認画面後でアップセル」という、ネット通販の注文手続きの確認画面の後で、さらに関連商品などを提案して購入を促す仕組みで特許を取得しており、独自の強みを持っています 。
グループ戦略と多角化
売れるGは、単一の事業だけでなく、グループ全体でD2Cビジネスを幅広くサポートする体制を築いています 。
- 売れるネット広告社: 中核となるクラウドサービスやコンサルティングを提供。
- オルクス: 自社で健康食品や化粧品のD2Cブランドを運営。これにより、D2C事業者の立場を深く理解し、実践的なノウハウを蓄積しています。
- 売れる越境EC社: 日本の商品を海外に販売する越境ECを支援。
- 売れるD2C業界M&A社: D2C業界に特化したM&A(企業の合併・買収)の仲介サービスを提供。
- JCNT: 法人向けのWi-Fiレンタル事業も展開しており、やや異色ながらも収益源の一つとなっています。
このようなグループ構造は、D2C市場で包括的なパートナーとなることを目指す戦略の現れと言えます。
例えば、M&Aで買収した企業が同社のクラウドサービスを利用したり、自社ブランド運営の知見をコンサルティングに活かしたりといった相乗効果が期待できます。
一方で、2023年10月に上場したばかりの比較的新しい上場企業としては 、多角的な事業展開は経営資源が分散するリスクも伴います。この点は、今後の成長を見守る上で注目すべきポイントです。
2. なぜ売れるGの株価が上昇しているのか?
では、なぜ売れるGの株価がこれほどまでに上昇しているのでしょうか。
特に売れるGのような成長企業の場合、新しい技術の開発、大型提携、業績に繋がりそうな新規事業の発表などが強力な材料となり得ます。
相次ぐ好材料の発表(2025年4月~6月)
売れるGは、2025年の春以降、投資家の期待を高めるような発表を連発しています。
これらのニュースが複合的に作用し、株価を押し上げていると考えられます。
- 2025年4月:
- 14日: 今後3年間で10社のM&A(企業買収)を目指し、売上100億円体制を構築するための資金として2.9億円を調達したと発表 。積極的な成長戦略を示すもので、市場に大きな期待感を与えました。
- 16日: アパレルEC市場(推定2.9兆円)に向けた新サービス『売れるAIアパレル試着』アプリの完全自社開発を発表 。AIという成長テーマに乗り出す動きです。
- 2025年5月 (ニュース満載の1ヶ月):
- 11日: 子会社『オルクス』が、巨大市場であるAmazonでのコンサルティングと広告運用サービスを開始すると発表。
- 13日: 世界的なIT企業であるMeta社(旧Facebook社)から広告運用の実力を示す「Meta Business Partners」に認定されたことを公表 。
- 18日: OpenAI社のChatGPTと連携した「買うAI」最適化サービス(AEO戦略)の独占リリースを発表 。これもAI関連の注目材料です。
- 20日・21日: 完全成果報酬型の提携社数が500社を突破したと発表し、ネットワークの拡大を示しました 。
- 21日: 『売れるAIアパレル試着』のデモ映像を初公開し、AIプロジェクトの具体性をアピール 。
- 28日: 東京証券取引所による信用取引に関する規制(増担保規制など)が解除されたと発表。
- 2025年6月 (直近の株価急騰の引き金):
- 1日: M&A資金として新たに4.15億円を調達完了したと発表し、買収戦略への本気度を改めて示しました 。
- そして、6月9日の株価急騰の最大の材料となったのが、同日午前8時40分に発表された「TikTok Shop“運営代行第1号”が始動!」というニュースです。
- TikTokは世界的に人気の動画プラットフォームであり、そのEC機能である「TikTok Shop」は日本でも大きな成長が期待されています。その運営代行で「第1号」という先行者利益をアピールしたことが、投資家の強い買い気を誘いました。実際、6月4日にはTikTok Shopの正式ローンチ前から商談が殺到し、複数受注を獲得しているとも報じられていました 。
このように、4月から6月にかけて、AI関連の新サービス開発、M&A戦略の推進と資金調達、有力プラットフォームとの連携といったポジティブなニュースが、まるでシャワーのように次々と発表されました。
そして、5月末の信用取引規制解除によって市場の流動性が高まったところに、6月9日のTikTok Shopという非常にインパクトの強いニュースが投下されたことで、株価が一気に跳ね上がったと考えられます。これは、良いニュースが積み重なり、市場環境も整ったタイミングで決定的な材料が出た結果と言えるでしょう。
市場のムードと投機的な動き
一連の好材料は、短期的な利益を狙う投資家(投機筋)の資金も呼び込んでいるようです。
ある報道では「手掛かり材料が相次いだことが短期資金を招き株価が上昇」と指摘されています 。
また、2025年5月30日時点での信用買い残(信用取引で将来の株価上昇を見込んで買われた株数)が売り残に対して17.00倍と非常に高い水準にあります 。
これは、多くの投資家が「まだ上がるだろう」と強気になっていることを示唆しますが、一方で、将来的にこれらの買いポジションが決済売りされる際には、株価の下落圧力となる可能性も秘めています。
さらに、売れるGは現在、投資家が注目しやすい複数の「テーマ」に関連しています。
- AI(人工知能): 『売れるAIアパレル試着』やChatGPT連携サービス 。
- D2C・Eコマース成長: 本業であるD2C支援 。
- M&Aによる拡大: 積極的な買収戦略と資金調達 。
- ソーシャルコマース: TikTok Shopとの連携 。 あるニュースリリースでは「『EC×AIエージェント』で“成長2トップ”独占へ! “テーマ株”の中核に浮上!」と自らアピールしており 、こうしたテーマ性が幅広い投資家層からの関心を集めている要因の一つです。
3. 今後の株価を考察
さて、これからの売れるGの株価はどうなるのでしょうか?
株価を予想するには、大きく分けて「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」という二つのアプローチがあります。初心者の方にも分かりやすく、それぞれの観点から見ていきましょう。
3.1 ファンダメンタル分析
ファンダメンタル分析とは、会社の経営成績や財務状況(いわば会社の健康状態や体力)を分析し、企業の本質的な価値(株価が割安か割高かなど)を評価しようとするものです。
業績の推移と会社予想
まず、売れるGの業績を見てみましょう。
売れるG:業績推移と会社予想(単位:百万円、1株益は円)

この表を見ると、いくつかの特徴が分かります。2022年7月期に売上が落ち込みましたが、2023年7月期には回復しています。
成長企業が減収予想を出すのは気になるところですが、これはM&A戦略本格化前の準備期間や事業ポートフォリオの整理などが影響している可能性も考えられます。
一方で、2025年7月期の売上高予想は16.5億円と、2024年7月期予想から2.2倍という非常に野心的な目標を掲げています 。これが達成できれば、大きな成長となります。
しかし、利益面では、2024年7月期、2025年7月期ともに営業損失、経常損失、最終損失が続く見込みです。
これは、売上を大きく伸ばすために、研究開発費やマーケティング費用、M&A関連費用などを積極的に投じている「先行投資期間」であることを示しています。

キャッシュフローは、会社のお金の流れを示します。
これらの財務データから浮かび上がるのは、「今は赤字でも積極的に投資して市場シェアを取り、将来大きな利益を上げる」という典型的な成長企業の戦略です。
2025年7月期の売上2.2倍増という目標はその象徴ですが、これが達成できなかったり、M&Aが期待通りの成果を生まなかったりした場合、さらなる資金調達が必要となり、既存株主の保有株の価値が薄まる(希薄化する)リスクも考慮に入れる必要があります。
3.2 テクニカル分析
テクニカル分析は、過去の株価や出来高(売買された株数)の推移をチャートで分析し、将来の値動きのパターンやタイミングを予測しようとするものです。
現在の株価チャートの状況

売れるGの日足チャート(1日ごとの値動きを示したグラフ)を見ると、いくつかの特徴が読み取れます。
- 明確な上昇トレンド: 2025年4月頃の株価348円あたりから、下値を切り上げながら高値を更新していく、きれいな上昇トレンドが形成されています。
- 最近の急騰: 特に5月上旬の500円台から6月9日の高値2,000円までの上昇角度は非常に急です。
- 移動平均線:
- 現在の株価はこれらの全ての移動平均線よりも大きく上に位置しており、かつ短期線が中期線の上に、中期線が長期線の上にある「パーフェクトオーダー」という強い買いシグナルが出ています 。
- 出来高:
- 株価の上昇とともに出来高も増加しており、特に6月9日には8,030,000株という非常に大きな出来高を記録しています。
- 一般的に、出来高を伴った株価上昇は、そのトレンドの信頼性が高いとされます。
サポート(下値支持線)とレジスタンス(上値抵抗線)
今後の株価を考える上で、サポート(下値支持線)とレジスタンス(上値抵抗線)が意識されます。
短期的には、6月9日の高値である2,000円が心理的な節目としてレジスタンスになる可能性があります。
勢いと過熱感
一方で、2025年4月の約348円から6月の2,000円まで、わずか2ヶ月ほどで株価が約5.7倍になった計算です。
このような急激な上昇は、株価が短期的に「買われすぎ(オーバーボート)」の状態にある可能性を示唆します。
株価が長期の移動平均線(例えば75日線は約831円 )から大きく乖離している点も、過熱感の表れと見ることができます。
強いモメンタム(勢い)は続くこともありますが、短期的には利益確定売りが出やすく、株価が調整(下落または横ばい)するリスクも高まっていると考えられます。
今後のシナリオ
テクニカル的には、以下のシナリオが考えられます。
- 上昇トレンド継続: 引き続き好材料が出て、業績期待が高まれば、上昇トレンドが続く可能性。
- 横ばいでの調整(保ち合い): 急騰後の利益確定売りをこなしながら、株価が一定の範囲で動く展開。
- 下落調整(プルバック): 過熱感が冷め、利益確定売りが優勢となり、株価が一時的に下落する展開。
6/13の決算があり、一時的に株価が急上昇・下落するかもしれませんが、最終的に将来性を込めてまだまだ株価上昇しそうではあるので買いかなと思います!
参照:https://kabutan.jp/stock/chart?code=9235
4. まとめ:売れるGの株、初心者はどう考えるべき?
ここまで、売れるGの株価上昇の背景、会社概要、そして今後の株価についてファンダメンタルとテクニカルの両面から見てきました。
重要なポイントの再確認
- 売れるGの株価は、AI関連、M&A戦略、そして特にTikTok Shop運営代行事業への参入といった、矢継ぎ早の好材料発表によって急騰しました 。
- ファンダメンタル面では、非常に野心的な売上目標を掲げる成長企業ですが、現在は利益よりも成長を優先する「先行投資」の段階にあり、赤字が続いています 。これは、高い成長ポテンシャルを秘める一方で、リスクも高い投資対象であることを意味します。PBRが非常に高いことも、市場の大きな期待と、それが叶わなかった場合のリスクを示しています。
- テクニカル面では、株価は強い上昇トレンドにありますが、短期的には過熱感も見られ、今後の株価変動には注意が必要です [Image 1]。
初心者の方へのバランスの取れた視点
- 魅力的な成長ストーリー: 売れるGが展開するAIを活用した新サービスや、D2C市場、ソーシャルコマース市場の将来性には、確かにワクワクさせられるものがあります。
- 注意すべき点:
- 株価の変動性(ボラティリティ): このような注目度の高い成長株は、株価が短期間で大きく上昇することもあれば、逆に大きく下落することもあります。
- 利益は保証されない: 過去の株価上昇が将来も続くとは限りません。
- 将来の収益化が鍵: 現在は成長のための投資が優先されていますが、長期的にはしっかりと利益を出せる体制を築けるかが、株価を支える上で非常に重要になります。
- 希薄化リスク: 成長資金を株式発行で調達する場合 、1株当たりの価値が薄まる可能性があります。
- 「期待」で買われる株の性質: 現在の株価は、将来への大きな期待(ストーリー)によって形成されている部分が大きいです。もしそのストーリーに陰りが見えたり、期待された成果が出なかったりすると、株価は大きく変動する可能性があります。
また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
https://blog-hero.com/