今回注目するのは、サーボモーターとインバーターで世界トップの企業である安川電機(6506)について分析します。
同社は2024年4月から株価が下落し続け、年初来安値を更新をしています。
本記事では、安川電機(6506)の株価下落の背景を解説するとともに、今後の業績や株価の見通しについて詳しく考察します。
結論
安川電機(6506)の株価が下落している理由
・業績悪化:連続するネガティブ決算
・外部環境の逆風(関税など)
→ファンダ面でもテクニック面でも株価は底値付近にいそう
1. 安川電機とは?

安川電機(6506)は、福岡県北九州市に本社を置く、日本を代表する電機メーカーです。
同社はサーボモーターやインバーターといった産業用自動化部品の分野で世界トップクラスのシェアを誇っています。
特に独自の制御技術を武器に、産業用ロボット「MOTOMAN」シリーズでは累積出荷台数が世界有数という実績を持ち、“モノづくりの心臓”ともいえる存在です。
安川電機の製品は、工場の自動化(FA)、エネルギー効率の改善、半導体製造装置、EV関連など、成長産業に幅広く採用されており、日本のみならず世界中の製造業にとって欠かせない企業です。
2. なぜ安川電機の株価が下落しているのか?

2024年前半、安川電機の株価は堅調に推移し、一時は高値を更新する場面も見られました。
しかし、5月以降に株価は急落し、下落トレンドに突入しています。
2025年4月時点では、株価は2,600円台とコロナショック時の水準にまで落ち込んでいます。
では、なぜここまで株価が下がっているのでしょうか?その理由を業績面・外部環境・需給の3つの観点から詳しく見ていきます。
(1)業績悪化:連続するネガティブ決算
安川電機の株価下落の最大の要因は、業績の悪化にあります。
以下は最近の決算の概要です。
- 25年2月期第1四半期(3~5月)
売上収益:前年同期比▲7.1%の1,324億円
最終利益:前年同期比▲21.1%の91億円
進捗率:通期目標に対しわずか17% - 第2四半期(6~8月)
営業利益:前年同期比▲28.9%の118億円
通期予想:営業利益を700億円→640億円に下方修正(▲3.4%) - 第3四半期までの累計(3~11月)
韓国や米国での設備投資の停滞により、受注が想定を下回る結果に。 - 通期決算(25年2月期)
営業利益:502億円(前期比▲24.3%)と予想を大きく下回る着地
26年2月期:営業利益600億円の見通し(前期比+19.6%)
ただし市場コンセンサスの660億円は下回っており、依然として慎重な見方が支配的
このように、2期連続の業績下方修正と、投資家の期待を下回るガイダンスが続いたことで、市場からの失望売りが広がっています。
(2)外部環境の逆風:中国依存と地政学リスク
安川電機の売上の大部分は海外市場、特に中国依存度が高いのが特徴です。
中国の景気減速に加え、米中関係の緊張が同社の株価に影を落としています。
2024年末からは、米国の大統領選挙においてトランプ前大統領が返り咲く可能性が高まっており、対中制裁関税の再強化が再び意識され始めています。
これが対中輸出企業にとっては重大なリスクとなっており、安川電機も例外ではありません。
また、韓国や台湾を中心とした半導体製造装置関連の設備投資が鈍化している影響も無視できません。同社の製品はこれらの業界でも使用されており、需給悪化がダイレクトに業績に響いています。
(3)需給要因:テクニカル的な節目を割り込む
テクニカル的にも、株価が長期サポートラインを割り込んだことが投資家の売りを誘発しています。
過去のチャートでは2,500円〜2,600円台に強いサポートがありましたが、それを下回ったことで**“投げ売り”の流れが加速**した側面もあります。
3. 今後の安川電機の株価はどうなる?
では、今後の安川電機の株価はどのように動くのでしょうか?
ここではファンダメンタル分析とテクニカル分析の両面から予測してみます。
●ファンダメンタル分析:慎重な見方が優勢

先述の通り、業績は下方修正が続いており、すぐにV字回復する兆しは見えません。
半導体市場の回復も遅れており、製造業全体が設備投資を様子見する傾向が続いています。
さらに、アメリカ経済にリセッション(景気後退)の懸念が出ている中で、世界経済の縮小=安川電機の業績悪化に直結するため、警戒が必要です。
ただし、同社は財務面では健全な数値を維持しています。
- ROE:10.78%(予想)
- ROA:6.25%
- 自己資本比率:58%
財務健全性が高いため倒産リスクは低く、長期的には買い場を探る展開になりそうです。
●テクニカル分析:底値圏に近づいている?

株価は現在2,672円と、コロナショック時の安値水準に迫っています。
過去チャートを確認すると、2,000円〜2,500円が強い下値支持線として機能しており、この付近で反発したことが何度かあります。
私の見立てとしては、今後以下のような動きを想定しています。
- 第一段階の下落(現在進行形)
→ 2,000円付近まで下がり、悪材料出尽くし感から一旦反発。
→ 反発目処は4,000円前後。 - 第二段階の下落(2025年後半?)
→ アメリカ経済の本格的な悪化や再度の関税強化などで、再び下落トレンド入り。
→ 今度は3,000円近辺まで調整。 - 中長期では上昇トレンドに回帰
→ 世界経済が落ち着き、半導体・EV・工場自動化などの需要が回復すれば上昇トレンドに。
→ ただし4,000円〜5,000円は強い上値抵抗線。
参照:https://kabutan.jp/stock/chart?code=6506
4. まとめ:今は“買いのタイミング”か?
安川電機の株価は、業績悪化や地政学リスクを背景に2024年後半から下落が続いています。
しかし、財務基盤がしっかりしており、中長期的な回復余地がある点は注目すべきです。
短期的には警戒が必要ですが、今後2,000円付近で下げ止まりを見せるようなら、長期投資の“仕込み場”としては十分に検討の余地があると言えるでしょう。
もちろん、米中関係や世界経済の動向に引き続き注意を払いながら、段階的な投資(分割購入)をするのがリスクを抑える戦略として有効です。
また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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