米国政策金利(短期金利)と米国債券10年利回り(長期金利)の違いとは?

短期金利と長期金利 株の知識

株式市場や金融市場を理解する上で、短期金利長期金利の関係性は重要なテーマです。

本記事では、米国政策金利(短期金利)と米国債券10年利回り(長期金利)の違い、そして両者の相関について詳しく解説します!


結論

・米国政策金利(短期金利)は、連邦準備制度理事会(FRB)が設定する短期的な金利水準
・米国債券10年利回り(長期金利)は、長期金利は市場機能(需要と供給)により決定される
・短期金利と長期金利の間には一定の相関関係がありますが、その動きには時期や市場環境による違いが見られる


1. 米国政策金利(短期金利)とは?

米国政策金利とは、連邦準備制度理事会(FRB)が設定する短期的な金利水準を指します。

最近話題であるFOMCで利下げが決定されたみたいなニュースは米国政策金利(短期金利)に該当します。

この金利は金融政策の一環として、中央銀行(FRB)が景気やインフレ率に応じて民間銀行間の短期金利の誘導目標として調整されるものとなります。

政策金利には以下のような特徴があります。

  • 目的:経済の安定を図るため、インフレ抑制や雇用の最大化を目指して調整されます。
  • 手段:FF金利(フェデラルファンド金利)と呼ばれる、銀行間の翌日物取引の金利が代表的です。FRBは公開市場操作を通じてFF金利を調整します。
  • 影響範囲
    • 短期融資の金利(例:クレジットカード、変動型のローン金利)など銀行からお金を借りる際に直結します。
    • 消費者の購買行動や企業の投資活動に大きな影響を与えます。

例えば、政策金利が引き上げられると、銀行の借入コストが上昇し、結果として市場全体の金利も上昇します。そのため、経済活動が抑制される傾向があります。

2. 米国債券10年利回り(長期金利)とは?

米国債券10年利回りとは、米国財務省が発行する10年満期の国債から得られる年間収益率を指します。

そのため、米国債券10年利回り(長期金利)は市場機能(需要と供給)により決定されます。

この指標は、長期的な経済予測や投資判断において重要な役割を果たします。

  • 役割
    • 長期的な経済成長やインフレ期待を反映します。
    • 長期的な住宅ローンや企業の長期融資の金利に影響を与えます。
  • 決定要因
    • 需要と供給債券の需要が高まると価格が上昇し、利回りが低下します。一方、債券の需要が低下すると価格も低下し、利回りが上昇します。
    • インフレ期待インフレ率が高まると、利回りも上昇する傾向にあります。
    • FRBの金融政策:短期金利の変動は長期金利にも影響を与えますが、その動きは必ずしも一致しません

10年利回りは、リスクの少ない長期投資のベンチマークとしても利用され、世界中の投資家にとって重要な指標です。


3. 短期金利と長期金利の相関について

短期金利と長期金利の間には一定の相関関係がありますが、その動きには時期や市場環境による違いが見られます。

  • 基本的な関係性
    • 通常、短期金利が上昇すると長期金利も上昇し、短期金利が低下すると長期金利も低下する傾向があります。
    • これは、短期金利が金融市場全体の金利水準に影響を与えるためです。
    • 例:短期金利が上昇すると、債券を買って得れる利回りよりも、銀行に預けていた方が利回りが高く得なので債券から銀行に資金が流れるため、債券の価格が低下して利回りが上がることになります。
  • イールドカーブの変化
    • 短期金利と長期金利の差を示すイールドカーブ(利回り曲線)は、経済の状況を示す重要な指標です。
    • 通常の状態:長期金利が短期金利を上回る(正のスプレッド)。
    • 逆イールド:短期金利が長期金利を上回る(負のスプレッド)。これは景気後退のシグナルとされます。(債券の需要が増えて価格があがるため)
  • 相関の例外
    • 短期金利の変動が直接的に長期金利に反映されない場合もあります。
    • 例えば、FRBが短期金利を引き上げた場合でも、投資家が長期的な経済低迷を予想すると、長期金利は低下する可能性があります。

金利と株式相場の相関について

短期金利と長期金利の動向を理解することで、投資家は次のような判断を下すことができます。

  • 経済の方向性の予測
    • 逆イールドカーブは景気後退の前兆とされ、株式市場や不動産市場への影響を予測する手がかりになります。
  • 投資戦略の構築
    • 金利上昇局面ではディフェンシブ株への移行や安全資産の増加を検討することが推奨されます。
    • 金利低下局面では成長株やリスク資産への投資が有効となる可能性があります。

金利データ分析

上記のローソク足が米国10年債利回り、白い太線が米国政策金利、紫線がS&P500です。

過去数十年のデータを分析すると、政策金利と10年利回りには時期ごとに異なる相関が見られます。

例えば、2020年代初頭の低金利環境では、FRBが政策金利をゼロ付近に維持した一方で、長期金利は市場のインフレ期待に応じて変動しました。

現在、短期金利である政策金利が長期金利である米国10年債利回りを上回っており、逆イールド状態です。

近年の金融政策では、FRBの利下げを進めているのですが、長期金利はそれに反し上昇をしているので逆イールド状態を解消しようとしています。

しかしながら、この状況は株式市場には悪影響を及ぼし、株価が下がっていくことも予想されます。

参照:https://jp.tradingview.com/chart/dE0oEEAz/?symbol=TVC%3AUS10Y

4. まとめ

米国政策金利(短期金利)と米国債券10年利回り(長期金利)は、金融市場において密接に関連しつつも、独立した動きを見せることがあります。

両者の関係を理解することで、経済の見通しを立てるだけでなく、効果的な投資戦略を構築することが可能です。

投資家としては、金利動向を注視しつつ、経済全体の動きや市場心理を総合的に考慮する必要があります。

また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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