株式投資において、企業が配当金をどれだけ安定的かつ効率的に支払っているかを測る指標は重要です。
特に長期投資を志向する投資家にとって、「株主資本配当率(DOE)」は見逃せない指標の一つです。
本記事では、DOEの基本的な仕組みから、そのメリット・デメリット、さらには業種別平均やランキングまで幅広く解説します。
1. 株主資本配当率(DOE)とは
DOEの概要
株主へ支払う配当を大幅に増やし、株主還元を充実させる上場企業が相次いでいる。
従来掲げてきた配当性向を引き上げたり、新たな還元指標として株主資本配当率(DOE)を採用したりする動きが盛んだ。
株主資本配当率(DOE: Dividend on Equity)とは、企業が株主の資本(純資産)に対してどれだけの割合を配当として支払っているかを示す指標です。
参照:https://fsreading.net/%E7%B4%94%E8%B3%87%E7%94%A3%E3%81%A8%E3%81%AF/
【株主資本とは】
貸借対照表の『純資産の部』のうち、株主資本に相当する部分の合計金額のことです。
株主が出資した「資本金」のほか「資本準備金」「資本剰余金」「利益準備金」「利益剰余金」などで構成されます。
具体的には、株主資本に対する配当金の割合を計算するもので、企業の安定性や収益性を測る上で重要です。
株主資本配当率は変動の少ない財務視点を取り入れた「株主資本」を基準にして配当金を決定するため、安定配当に繋がります。
また、株主資本配当率は配当金を増やしたり、自社株買いを行い株主資本を圧縮することで高くなります。
野村不動産ホールディングスでは「不透明な事業環境下での配当の安定性を高めるため」として、2025年3月期から、配当性向目標とは別にDOE4%を配当下限とする方針を追加しました。
ダイセルも従来掲げている総還元性向40%の目標に加えて、新たにDOE4%以上の目標値を採用しています。
DOEの求め方
DOEは以下の式で計算されます:
ここで、株主資本は企業の純資産に相当します。
この指標は、配当金が企業の資本に対してどれだけの割合を占めているかを示すため、企業の財務健全性と配当政策のバランスを見るためのツールとして活用されます。
【例】
年間配当総額が2億円、株主資本が100億円の場合、株主資本配当率は2%(2億円÷100億円×100)となります。
年間配当総額が大きければ大きいほど、DOEが高くなりますね。
逆に株主資本が少なくなってもDOEが高くなってしまうので、DOEが高い理由を探す際にはそこの部分を注目しておくのが良いでしょう!
配当性向・累進配当との違い
- 配当性向(Dividend Payout Ratio): 企業の利益(純利益)に対する配当金の割合を示します。
短期的な利益に依存するため、利益変動の激しい企業では不安定になる傾向があります。- 配当性向(%) = 年間配当総額 ÷ 当期純利益 × 100
- 累進配当: 配当金を減らさない、または段階的に増やしていく方針を意味しますが、配当原資の持続性が問題になる場合があります。
一方、DOEは株主資本に基づいて算出されるため、企業の財務体質に着目した指標と言えます。
2. メリット・デメリット
メリット
- 配当の安定化
DOEは純資産に基づく指標であるため、短期的な利益の変動に左右されにくく、配当の増減が少なくなり安定化する傾向があります。
特に、長期保有を考える投資家にとって魅力的です。 - 財務健全性の評価に役立つ
株主資本が充実している企業ほど高いDOEを維持できます。
財務基盤がしっかりしている企業を選ぶ指標としても活用できます。 - 赤字でも配当あり
単年で赤字決算だとしても株主資本がある限り、理論上は無配転落など大型減配のリスクが低いです。
デメリット
- 成長企業には不向きな場合がある
配当の安定化で述べたとおり、増減が少なくなります。単年で突発的な好業績を残しても、業績と配当額にギャップが出やすくなります。 - 業種ごとのばらつき
業種によって適正なDOEの水準は異なります。例えば、資本集約型の業界では低いDOEが一般的です。 - 企業の配当政策に依存
配当額を意図的に抑えている企業では、必然的にDOEが低くなるため、他の指標と併用して分析する必要があります。
3. 各業種の株主資本配当率(DOE)の平均値
業種ごとにDOEの平均値は異なります。以下は主要業種の平均DOEの目安です。
参照:https://zaimani.com/financial-indicators/dividend-on-equity-ratio/
業界による特徴を理解することで、適正なDOE水準を見極めるのが重要です。
4. 株主資本配当率(DOE)採用している企業ランキングTOP5
ここでは、2024年現在で注目すべき高DOE企業をランキング形式で紹介します。
参照:https://toyokeizai.net/articles/-/760580
高DOEの企業を見る限り、ROE(自己資本利益率)が非常に高く、経営が上手い企業といったことが分かりますね。
【自己資本利益率(ROE)とは】
会社が資本を効率よく活かし、利益をあげているかを測る数値です。自己資本利益率や株主資本利益率ともいわれます。
一般的に理想とされているのは、自己資本利益率10%以上です。
5. まとめ
株主資本配当率(DOE)は、企業の配当政策の安定性や財務健全性を測るために役立つ指標です。
特に、長期投資を重視する投資家にとっては、DOEの高い企業は魅力的な選択肢となるでしょう。
ただし、業種ごとの特性や他の指標との併用も重要です。
投資の成功には、単一の指標だけでなく、包括的な視点で企業を評価することが求められます。
DOEをうまく活用し、長期的な資産形成を目指してみてはいかがでしょうか?
また、銘柄選択の方法(スクリーニング)や株についての記事も書いているので参考にしていただければ!
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